第9話

ハーピーたちの高床式の家が完成してから数日が経った。

朝の陽光が山の麓の土地を優しく照らす中、レオンたちは工房の少し離れた場所に集まっていた。

そこは今まで小さな菜園だった場所で、今日は畑を大きく拡張する作業の日だった。

レオンはシャベルを手に、地面を丁寧に掘りながらみんなに声をかけた。


「みんな、今日は畑を広げるよ。

今までは十分だったけど、ハーピーさんたちが増えて、みんなの食事が増えたから、もっと作物を育てないとね。ここを倍くらいの広さまで開拓して、じゃがいも、にんじん、豆、それに果物も少し植えようと思う」


シアが翼を軽く広げて、空からゆっくり降りてきた。

彼女はレオンの隣に着地し、少し心配そうに言った。


「レオン様……私たちのせいで、急に畑を広げることになってしまって……本当に申し訳ないです。私たちハーピーは飛んで遠くの森から実やキノコを探してくることもできますよ?」


シアは「負担をかけたくない」という気持ちが強かった。

レオンはシャベルを地面に刺しながら、穏やかに微笑んだ。


「ありがとう、シア。

でも、みんなで自給自足できるようにしたいんだ。ハーピーさんたちが飛んで探してきてくれるのも嬉しいけど、毎日安定して食べられる畑があった方が安心だろ?

それに、みんなで一緒に作業するのも楽しいよ」


ミアが尻尾をぶんぶん振りながら、元気よく土を掘り返していた。


「ミアも頑張るよ!

この辺り、土が柔らかくて掘りやすいね!

にんじんがいっぱい育ったら、ミアの特製スープがもっと美味しくなるよ!」


リリアは丁寧に種をまきながら、優しい声で言った。


「レオン様、確かに食料は大事ですね。

でも……レオン様がまた朝からずっとシャベルを振って……体を壊さないか、少し心配です。

私たちももっとできることがありますから、遠慮なく言ってくださいね」


リリアはレオンの無理をいつも気にかけていた。

レオンは汗を拭いながら、軽く笑って答えた。


「わかってるよ、リリア。

今日はみんなで分担するから大丈夫。

俺は土を深く掘って、シアとハーピーさんたちは上の方の枝や葉を片付けて、

ミアとルナは種まきと水やりを頼むよ」


ルナは紫色の角を少し傾け、魔力を軽く込めながら土を整えていた。

彼女は静かに、しかしはっきりと言った。


「……私の魔力で、土の栄養を少し良くしておきます。作物が元気に育ちやすくなると思います。レオン様……本当は、私たちだけでも畑を広げられるのに、いつも一緒に作業してくださって……ありがとうございます」


シアが空から軽く飛んで、大きな葉っぱの束を運びながら加わった。


「レオン様、私たちハーピーも飛べる分、広い範囲を見渡せます。害虫や悪い草が来てないか、ちゃんと見張りますね。

……本当に、みんなで暮らせるようになって嬉しいです。三年前は、ただ逃げてきただけだったのに……」


レオンはシャベルを置き、みんなの顔を順番に見回した。


「俺もだよ。

最初はリリア一人で、雨漏りの小屋だった。

今はハーピーさんたちの家までできて、畑も広がって……正直、夢みたいだ。

でも、みんながいるから続けられるんだ。

これからは、もっと作物を増やして、

余った分を街に売ったり、保存食を作ったりしよう。そうすれば、冬も安心だろ?」


ミアが土だらけの手を拭きながら、明るく笑った。


「うん! ミア、保存食のレシピいっぱい知ってるよ!ジャガイモの干し芋とか、にんじんのピクルスとか!みんなで作ろうね!」


リリアは種をまき終えた手を軽く払い、優しく微笑んだ。


「レオン様の言う通りです。

みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫。

……本当は、私も少し不安だったんです。

人数が増えて、食料が足りなくなるんじゃないかって。でも、レオン様がいつも前向きに考えてくださるから、私も頑張ろうって思えます」


ルナが小さく頷き、珍しく少し積極的に言葉を続けた。


「……私も。

魔族の私でも、ここでは普通に暮らせる。

畑の作物が育ったら、みんなで一緒に収穫して、美味しいご飯を囲みたいです」


シアは翼を軽く羽ばたかせて、嬉しそうに言った。


「私たちハーピーも、飛んで肥料になる落ち葉を集めたり、水を運んだりします!

レオン様が作ってくれた高床式の家で暮らしながら、みんなと一緒に畑を育てる……なんだか、すごく幸せです」


午後遅くまで作業を続け、畑は予定の倍近くまで広がった。

新しい溝が掘られ、種がまかれ、水が引かれ、魔力で土が整えられた。

作業の終わりに、みんなで畑の端に座って水を飲んだ。

レオンは満足げに広がった畑を見て、静かに言った。


「今日はよく頑張ったな。

これで来シーズンは、もっとたくさんの作物が取れるはずだ。みんなのおかげだよ。本当にありがとう」


ミアが尻尾を激しく振りながら、元気に声を上げた。


「えへへ、ミアも楽しかった!

次は収穫の時が楽しみだね!」


リリアはレオンの袖を軽く引き、優しく囁いた。


「レオン様……今日も無理しませんでしたか?

夕飯の後は、ちゃんと休んでくださいね。

私たち、みんなレオン様が元気でいてくれるのが一番嬉しいんです」


レオンは心から温かい気持ちになり、本音を少しだけ言葉にした。


「わかったよ。

みんながいるから、俺も頑張れる。

これからも、この土地を、みんなが笑って暮らせる場所にしていこう。……少しずつ、暮らしやすい場所にしていけるようにね」


夕陽が広がった畑をオレンジ色に染める中、

レオンと仲間たちの笑い声が、静かな山の麓に優しく響いていた。

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