この作品、まず一言ツッコミを許してほしい。
また転生かよと思わせてからの、
“いやそれでも読むしかないだろ”に持っていく手つきがあまりにも鮮やか。
ルインの温度感が絶妙で、
世界の理不尽もご都合も、全部いったん受け入れてから
自分の土俵に引きずり込むあの感じ、ずるいほどに気持ちいい。
軽口は軽いのに、判断は重い。
笑ってるのに、命のやり取りでは一歩も引かない。
そのギャップが読み手の心拍をじわっと上げてくる。
しかも【視て盗む】という“努力と観察が前提のチート”が、
戦闘のたびに知性の匂いを残していくから、ただ強いじゃ終わらない。
どう勝つかが毎回ドラマになる。
仲間との連携には信頼の体温があって、
その視線には物語の未来が宿ってる。
世界は広いのに、ちゃんと人が中心にいる。
だからどれだけ派手に戦っても、最後に残るのは
“誰かのために動いた手触り”。
そして何より、この描き手、読み手のこういうの好きを一歩先回りしてくる。
お約束を裏切らずに、期待だけ裏切る。
その匙加減が抜群。
シリーズで育ていく匂いがする、ちゃんと“続いていく物語”。
ありがとう、このワクワクをくれる手つきに、
普通にファンになります。
異世界転生を知り尽くしているという設定だからこそ、典型的な場面に期待するものと違った時の落差がおかしく、読みながら何度もクスッとなりました。
【視て盗む】というスキルは、本文にもあるように、まるでバイトで先輩の仕事を見て覚えるみたいな地道さがあっておかしい。
そんな現実性とのリンクも、共感性をグッと引き寄せます。
とにかく地の文が愉快で読みやすく、それでいてしっかりと説明がなされているので、自然に物語世界に入っていけます。
「はいはい知ってる、アレね……」が振りとなり、「え?」の戸惑いできちんと落とす。
だから安心して楽しみながら読み進めることができます。
まさに異世界を遊び倒したような物語。
理屈抜きで文字を追っていけば楽しめる作りになってますので、まずはこのステキな世界に足を踏み入れてみましょう。
愉快な読後感によって、さらに異世界が好きになれます。