101年愛された土鍋の「誰かを温めたい」というまっすぐな思いがそのまま形になっていて、終始やさしい気持ちで胸がいっぱいになりました。
道具や食材の声を聞き、鶏肉さんをお風呂に入れる感覚でお出汁をとるツギちゃんの姿がとても愛おしいです。
出汁文化のない異世界で、派手さではなく素材の旨味と丁寧な仕事で勝負する「水炊き」が、ピリついた厨房や冷酷と恐れられる公子様の心を少しずつ解きほぐしていく過程が本当に心地よく描かれています。
「私、女って名前じゃないですー」と返す飾らないマイペースさと、眠る彼女にそっとマントをかける公子様の不器用な優しさ。
二人の間に流れる絶妙な空気感も魅力的でした。
「美味しい」という一言で食材も人間も幸せになれる――そんな食卓の温もりと、モノを慈しむ愛おしさがぎゅっと詰まった、心がじんわりと解きほぐされるような温かい作品です。
土鍋が人間に転生する、といういわゆる突飛系なろう小説かと思いきや、その中身は非常にわかりやすく「食の大切さ」を書いている作品です。
登場人物の名前のわかりやすさも相まり、是非小学生くらいの子供に「ちょっと難しいけど面白いから読んでみて!」と手渡したくなるような作品です。
食だけでなく「物」の取り扱いの大切さも、物と喋れる主人公の目線で描かれているというのも、子供にそういったことの大切さを伝えられるいいお話だなあ、と感じさせられました。
個人的にはドキドキすることを「鍋底がコトコトする」と表現する主人公の可愛らしさが非常にツボです。
一体主人公は不器用な公子とどんな関係になるのでしょうか。この先の展開がとても楽しみな作品です。