名門貴族で双子として生まれた主人公のアルトが弟の影武者となる物語は、丁寧な説明によって立ち上がっていきます。
やさしいアルトに対し、毒舌メイドのエルミナや気弱な婚約者のノエルなど、キャラクター同士のやりとりが充実していて、読みながら何度もクスッとなりました。
弟の死など重めの導入ながらも、コミカル要素によって中和され、とても読みやすく仕上がっている印象です。
タイトルの通り、領地を再建していくのですが、そこには他者との関わりによる信頼が重要であるため、他者を通じた主人公の成長も感じることができる。
そして再分配(リライト)のスキルが物語にいっそうの魅力をもたらし、そこから一気に引き込まれました。
成分分析眼鏡に対する軽妙なツッコミなど、つい笑ってしまう場面が多く、とにかく読んでいて楽しい。
きっと作者さまは、根っから人を笑わせることがお好きな、サービス精神旺盛な方なのでしょう。
ゴブリン退治や騎士団の登場など、異世界要素も楽しめ、様々な角度からたっぷり味わえる構成になっています。
最近笑うことが少なくなっている方には特にオススメ、ユーモア全開の物語です。
『無能と追放された領主の息子ですが、弟の影武者となって領地を建て直します』を読んで感じたのは、追放される人って、追放されるんですよね。
でも、追放されたからこそ見える景色がある。
これ、あると思うんです。
影武者というのは、“本人ではない”ということなんですけど、
逆に言えば、“本人以上になれる可能性”でもあるんですよね。
この作品、領地再建モノなんですけど、
つまり、人を動かし、信頼を積み重ねる。
それを一歩ずつやっていく。
派手な俺TUEEEじゃない。
でも、地に足がついてるんです。
あと、“無能”と言われた主人公が、実際には周囲をちゃんと見ている。
これ重要です。
本当に無能な人は、自分が無能だと悩まないんですよね。
だから読んでいるうちに、
「あれ、この主人公、かなり有能なのでは?」となる。
そして気づくんです。
人は時に、“正当に評価されない”ことがあるんだと。
でも評価されなかった経験は、
後に評価されるための経験でもあるんですよね。