古本屋で見つけた詩集の隙間を埋めるため、
マコトは硝子ペンを走らせる。
透明な軸から滴る藍色のインクが紙に滲むと、
名もなき住人からの細い文字が浮かび上がった。
外界の景色を高解像度で観察し、文字を綴る彼の行動は、都合よく彼女を本から引き出す展開には繋がらない。
言葉を交わすほどに残された領域は削り取られ、彼女の息遣いを確実に奪っていく。ページをめくるたび、視界の端から少しずつ光が剥がれ落ちる。
窓の外を、季節外れの雪が通り過ぎた。
与えられた奇跡での救済ではなく、限られた文字数で互いを刻み込む契約だ。
研ぎ澄まされた熱を求める読者なら、最終ページの余白に必ず息を呑む。