実際に起きた事件をベースにした本作は、
読み始めた瞬間から不気味な現実感に引き込まれる。
一見すれば不可解な変死事件。
しかし読み進めるほどに、これは単なる異常行動では説明しきれないことに気づかされる。
整然と始まり、徐々に崩れていく行動の軌跡――その中でなぜか最後まで残る“ある一貫性”が、強烈な違和感を生む。
医学的な説明は提示されている。
それでもなお拭えない疑問が、読者の中にじわじわと広がっていく構造が見事。
「なぜそこへ向かったのか」
その一点に引っかかった瞬間、この話はただの事件ではなくなる。