幽霊が見えるカウンセラー・戸塚肇と、死んだはずなのに現世へしがみつく少女・神立栞。
最初は、ホラーなのにテンポのいい掛け合いに笑いながら読み進めていました。けれど物語が進むほど、この作品が描いているのは、ただの幽霊との交流ではなく、「相手をどう扱うか」という、とても真っ直ぐな問いなのだと感じました。
栞は幽霊でありながら、誰よりも感情豊かで、痛がり、怒り、笑い、誰かのために本気で動く子です。そんな栞を、肇が“成仏させる対象”としてではなく、ひとりの人間として見続けるところがとても印象的でした。
一方で、肇の優しさも決して万能ではありません。守りたい気持ちが強すぎて間違えることもある。けれど栞は、ただ守られるだけの存在ではなく、肇を叱り、導き、隣に立とうとする。その関係が、まさにバディでした。
北川アリサや化け猫との一件も、単なる怪異退治では終わらず、未練や想いの複雑さが残るところに、この作品の深みを感じます。
そして終盤に向かうほど、栞と肇の関係に込められたものが深まり、切ないのに不思議と温かい余韻が残りました。
死を受け入れることだけが救いなのではなく、みっともなくても、怖くても、「まだ生きたい」と願うことそのものを肯定してくれる。
別れを描きながら、想いが続いていくことを信じさせてくれる。
読み終えたあと、栞と肇の旅路を静かに思い返したくなる、優しくて切実な現代ファンタジーでした。