くしゃみで滅ぶ世界2 ~ヒノキ、追撃してきました~

■前回のあらすじ


杉花粉という“地味すぎる兵器”で人類を混乱に陥れた魔王ヴェルデ。


だが人類は賢かった。


「春に戦わなければいい」

「杉を燃やせばいい」


――実にシンプルかつ雑な方法で、この未曾有の危機を乗り越えたのである。


王都には再び平穏が戻った。


騎士たちは笑い、魔導士は安定した詠唱を取り戻し、

人々はこう思った。


「もう大丈夫だ」と。


そのときだった。


「……では、次の実験に移ろう」


魔王ヴェルデは、静かに新たな森を生み出す。


それは杉ではない。


ヒノキ。


■第二次災害:ヒノキ花粉


「くしゃみ……止まらな……いや、さっきより酷い!?」


「目が!痛い!かゆいじゃない、痛い!!」


「薬が……効かない!?」


王都は再び崩壊した。


しかも今回は、前回よりも深刻だった。


■なぜ被害が拡大したのか


理由は単純で、そして最悪だった。


・杉対策に特化した薬が効かない

・“もう終わった”という油断

・体がすでに弱っている状態での追撃


つまり――


コンボが成立していた。


騎士団の記録:


杉で蓄積した疲労により回復が遅延

ヒノキによる症状増幅(くしゃみ頻度1.5倍)

目の炎症悪化により視界ほぼゼロ


ある兵士はこう証言する。


「これは戦いじゃない……拷問だ……」


■精神の崩壊


さらに深刻だったのは、精神面だった。


「……またかよ」


誰もが思った。


終わったはずだったのに、終わっていない。


努力が無意味だったかのような現実。


人々の心は、静かに折れていく。


「外に出たくない」が

「もう何もしたくない」に変わる。


■魔王の観察記録


ヴェルデは淡々と書き記す。


「ヒノキは“追撃兵器”として極めて優秀」


「単体ではなく、杉との連携により真価を発揮する」


「人類は“終わりが見えない苦痛”に弱い」


彼は満足そうに頷く。


「戦争とは、継続ダメージだ」


■人類、限界突破


しかし――


ここで人類は、予想外の進化を見せる。


「もう全部まとめて対策する」


開発されたのは、


完全統合型・対花粉装備


・全身密閉スーツ

・魔力循環型フィルター

・目・鼻・喉すべてを防御


見た目は――


完全に不審者だった。


だが性能は圧倒的。


「……見える!息ができる!くしゃみが出ない!!」


ついに人類は、花粉に打ち勝つ。


■だが、新たな問題


「……暑い」


「重い」


「動きにくい」


戦闘力は回復した。


だが機動力は死んだ。


結果――


普通に魔族にボコられた。


■エピローグ


魔王城。


ヴェルデは静かに結論を出す。


「杉で削り、ヒノキで折る」


「完璧な二段構えだ」


そして彼は、次の魔導結晶を取り出す。


そこに封じられていたのは――


謎の黄色い粒子。


「これは“黄砂”という」


側近が震える。


「……それも人体に影響を?」


ヴェルデは微笑む。


「花粉と混ざると、さらに面白い」


■最後の一文


人類はまだ知らない。


この戦いが――


“春だけで終わらない”ということを。

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