第40話 天使との関係について
それから俺達は商業施設内のスーパーで食材の買い出しを済ませ、帰り道のケーキ屋でホールケーキの予約までをし終えた。
ケーキ屋で店員からプレートに書くメッセージを聞かれた時はどうしようかと悩んだが、結局「ゆうなちゃん誕生日おめでとうでお願いします…」と答えた時は恥ずかしさで死ぬかと思った。
両手に食材やらプレゼントやら、沢山の荷物を抱えて清春と二人俺の家までの道のりを歩く。ちなみに清春は既にプレゼントは購入しているらしい。
明日の献立はハンバーグとエビフライという大堂メニューに決定した。決めて材料まで買ったはいいものの作れるかどうかは不明である。
「上坂さん、喜んでくれるといいな〜」
「あいつの事だから泣いて喜ぶだろ」
「あはは、確かにな」
「なぁ、千景」
「ん?」
改まって名前を呼ばれて俺は清春の方に顔を向ける。さっきまでの会話の雰囲気とは打って変わって、清春の表情は至って真面目なものだった。
「上坂さんは一体何者なんだ?」
予想だにしていなかった清春の問いに、思わず体の動きが止まってしまう。清春が俺たちの関係を疑っているのは分かっていたが、ここで聞かれるとは思ってもいなかった。
「…………」
「答えられない、か?」
無言の俺に清春が悲しそうな笑みを向ける。
「答えられないというより…俺にもよく、分からないんだ」
「は?」
俺達が昔からの友達では無いことくらいきっともう清春は気づいているはずだ。
「…ある日突然現れたんだよ」
俺はゆっくりと口を開く。
「本当に、突然俺の前に現れて、それからは見ての通りだ
俺も何であんなに執着されてるか分からないし、身に覚えもないから特に説明できることもない。俺から清春に言えることなんてこれくらいだ」
彼女が自称天使だということは伏せながら、俺は初めて本当の事を清春に話した。そこを話したところで余計話が拗れるだけだと思ったからだ。俺が彼女について何も知らないので、正直言えば俺と清春の情報量なんて然程変わらないのだ。
「…それ、マジで言ってんの?」
清春は口を開けて唖然としていた。まあこうなるのは分かっていたことである。
「…はぁ、千景って時々常識知らずというかぶっ飛んだことするとは思ってたけど、まさかここまでとは……」
「それは俺も最近自覚してきた」
清春が頭の後ろで両手を組みながら「あー……」と唸りをあげる
「明日俺はどんな顔で上坂さんに会えばいいんだよ…
まさか千景が何も知らないとは思わないだろー」
「俺を侮りすぎたな」
「そこ誇るとこじゃないからな!」
「…でもまぁ、俺がいうのもなんだけど、悪意は感じないんだよ」
何を知っている訳でもないのに彼女と出会ったあの日からきっと俺の根幹にはずっとその感覚があって、だからこそ彼女を完全に拒絶する気にはなれなかった、というのが正直なところなのかもしれない。
「それは……まぁうん、言いたいことは分かるけどさぁ
それにしても無防備すぎなんだよアホ千景」
清春から本気のチョップが俺の頭に直撃する。
「った…もうちょい加減しろよな」
俺は頭頂部を片手で抑える。清春はそんな俺を笑いながら見つめていた。
「俺はいつだって千景の味方だからな」
サラリと告げられたその言葉の中には確かな重みが込められていた。
「あぁ、頼りにしてる」
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