どうしてクラゲは空を泳ぐのか。どうして猫の影は消えるのか。どうして言葉たちは逃げていくのか。不可思議なできごとは、特に理由なく、泡のように起こっては消えていきます。だってこの世界では、それが当たり前の日常だから。淡い砂糖菓子のような世界観です。
「空を泳ぐクラゲ」という幻想的な光景を、あえて「日常」として受け入れている街の人々と、それに戸惑う余所者セノの視点の対比が非常に美しい短編です。「空は空、海は海」という明確な世界から来たセノにとって、ヴェルナの「やわらかく混ざっている」空気感は、不安でありながらもどこか救いのように描かれています。