舞台は戦時下、軍政の影が忍び寄り、自由が奪われていく重苦しい空気に包まれた女学院。
主人公・冬美は、大財閥の令嬢でありながら時折ふっと姿を消す神出鬼没な少女・紗奈に、憧憬と畏怖、そして言葉にできない官能的な想いを抱いていました。
冬美がマリア像の前で祈りを捧げるたび、彼女の知覚には、まだ建っていないはずのガラス張りの新校舎の影や、紗奈のノイズ混じりの声が紛れ込みます。
理不尽な現実が日常を壊していく「過去」と、何らかの理由で干渉してくる「未来」。
マリア像を媒介として、決して交わるはずのない二人の時間と想いが、運命の濁流の中で静かに溶け合っていきます。
本作の最大の魅力は、凄絶な時代のリアリティと、時空が歪んでいく幻想的なSF設定が融合した「圧倒的な叙情美」です!
理不尽な現実に直面し、冬美が抱く狂気にも似た崇高な祈り。
それが次元を超え、絶望の淵で奇跡を呼び起こすクライマックスには、息を呑むほどのカタルシスを感じました。
二人の少女の間に流れる、清廉でありながらどこか危うい結びつきが格調高い筆致で丁寧に描かれ、読後もしばらく夢の中にいるような深い余韻に浸れます。
長い年月を経て「未来が完成する」ラストシーンの衝撃と美しさは、まさに唯一無二。
情緒的で、かつ知的な興奮を求めるすべての読者に、魂からおすすめしたい傑作です!