知的障碍者の友情

船五郎

知的障碍者の熱い友情を描く

1


ひだまり園は知的障碍者の通所施設だ。


利用者の中には自閉症やダウン症の人もいれば、殆ど普通の人と変わりないような人もいる。


話すのが苦手、漢字が苦手、数字が苦手、という人もいたり、工作が得意、絵が得意、楽器が得意等、多種多様である。




平山英二がひだまり園に入ってきたのは、特別支援学校を卒業してすぐだった。


英二の障害は軽度で、ひだまり園では一番いい方だった。


英二は明るい性格で、誰からも好かれ、人気者だった。またゲームが得意で、ゲームの事ならなんでも知ってた。




陣内省吾が入って来たのは、英二が入って来た2年後だった。


省吾は英二と同じ年で、誕生日も10日くらいしか違わなかった。


省吾は、普通高校を卒業した後、職業訓練校に通い、そこで調理師の免許を取った。その後運転免許も取得し、何件かの飲食店を転々とした。それからIQのテストを受け、療育手帳を取得する事となった。




英二と省吾は最初から意気投合し、好きなゲームの事で話が盛り上がった。


2人は次第にプライベートでも遊ぶようになった。


2


ひだまり園での作業は主に木箱を組み立てるというものだった。


最初は英二が先輩として省吾に教えていたが、省吾は呑み込みが早く、すぐに覚えていった。


「おまえ覚えるの早いじゃん!」


「いや、そんなことないよ」


こういった会話を繰り返した。


この2人はひだまり園ではトップレベルだったのだ。




英二と省吾はよく2人でカラオケに行った。


英二は主にアイドル系の歌を歌ったが、省吾はロック系の歌を歌った。


また、省吾はよく父親の車を借りて、英二をドライブに連れて行ってやった。海を見に行ったり、都心の方に行ったりした。


2人はアニメの話や、好きな女性のタイプなどをよく話題にした。


「俺たち、て将来結婚出来るかなぁ~」


「英ちゃんなら出来るよ!」


こういった言葉を交わしながらニヤニヤした。


3


英二は、作業効率が認められ、ひだまり園の斡旋で、食品加工会社に就職することになった。


省吾は英二に「頑張れよ!」と肩を叩いてやった。


「省ちゃんも後に続けや!」と省吾に喝破してやった。




英二は就職すると、凄まじく働いた。


英二は会社の事務員の美香という一つ年上の女性に恋愛感情を抱くようになった。


英二は猛烈に美香にアプローチした。やがて美香は英二の純粋さと一途な振る舞いに押され、付き合うようになった。


それから英二は就職から2年後に美香と結婚した。


結婚式はあげなかったが、省吾は2人の結婚を祝福した。


その後、女の子と男の子の2人の子供を授かった。


省吾は英二一家の住む市営住宅をよく訪ね、英二や美香とひだまり園でのエピソードをよく話すのだった。


「あのころ英ちゃん几帳面やったなぁ~」


「まあ、英二君そんなところがあったの」


「一体誰の話をしてるんだ!」


と言って談笑するのだった。


4


省吾がひだまり園に入って20年が経った。


省吾は作業はよくさばけるのだが、未だに就職してなかった。


それは省吾に問題があるのだが、彼は金銭管理が全くできず、貰ったお金を好きなだけ使って、無駄遣いが多いのだ!


省吾も40を過ぎ、両親は息子に生活訓練を受けさせるため、省吾をグループホームに入れることを決意した。


省吾はグループホームに入る前日、英二の家を訪ねた。


英二の奥さんや子供は出かけてて、家には英二一人だった。


英二は缶ビールを差し出し、2人で飲もうと言った。


「そうか、省ちゃんも家出るか」


「俺は入りたくないんだけどね、どこも行き場がないからさ、英ちゃんが羨ましいよ」


「家庭持ったっていいことばかりじゃないよ!やたらと気を遣うし」


省吾はビールをゴクリと飲んで言った。


「ひだまり園に最初入った時、英ちゃんカッコよかったな~、リーダーシップ取ってさ、よく動いてシャンシャンしている、ていうか」


「俺は省ちゃんの方が羨ましかったぜ、普通校出てるし、調理師とか運転免許なんか持ってて」


省吾はビールを飲み干し、アルミ缶を握り潰した。


「なあ、英ちゃん、俺たちずっと親友でいような!進む道は違ってもずっと親友!」


「そう、俺たちは一生仲の良い親友!」


2人はガッチリと手を組み合わせた!




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