第31話:名を持つものたち

「……本当に、勝ったのよね」


アカリがぽつりと呟く。


「ああ」


周囲を見渡す。


崩れた残骸。


そこには、はっきりと表示されている。


【個体名:深層核喰らい《アビス・イーター》(機能停止)】


「……」


やっぱり、見えている。


「ユウマ」


セラがじっとこちらを見る。


「さっきから、何を見てるの?」


「……文字が出てる」


「「は?」」


二人の声が揃う。


「敵の情報が、全部見える」


「……それって」


アカリが目を見開く。


「鑑定系?」


「多分な」


「しかも、かなり上位よそれ」


セラがすぐに反応する。


「普通の鑑定は“ここまで詳細に出ない”」


「……マジか」


『またチート増えたwww』


「試してみるか」


視線を、残骸に向ける。


すると。


【種別:ダンジョン管理個体】

【階層適応:第5層】

【特性:外殻干渉・再生・観測】


「……細かいな」


「それ、完全に当たりよ」


セラが断言する。


「情報戦で無双できるレベル」


「……でも」


アカリが少し不安そうに言う。


「さっきの“???”も見えたんでしょ?」


「……ああ」


あれは、明らかに異質だった。


「……外の存在」


小さく呟く。


その時。


――ピィィィン


「……っ!」


また、反応。


「どうした?」


セラが構える。


「……来る」


視界の先。


通路の奥。


“影”が動く。


「……一体じゃないな」


「数、増えてる」


アカリが剣を構える。


「でも――」


「さっきのよりは弱い」


「……それも分かるの?」


「ああ」


はっきり見える。


一体目。


【個体名:灰爪狼グレイ・ファング

【脅威度:C+】


二体目。


【個体名:洞穴喰い《ケイブ・デヴァウア》】

【脅威度:C】


三体目。


【個体名:影潜み《シャドウ・ルーカー》】

【脅威度:B-】


「……なるほどな」


「全部、名前付き……」


アカリが少し引き気味に言う。


「もう“ただの魔物”じゃないのね」


「最初からそうだったんだろうな」


ナイフを構える。


「ただ、見えてなかっただけだ」


敵が、じわりと距離を詰める。


「どうする?」


セラが確認する。


「逃げる?」


「いや」


首を振る。


「試す」


「……何を?」


「この力」


一歩、前に出る。


「どこまで通用するか」


「無茶しないでよ?」


「しない」


軽く笑う。


「今回は、ちゃんとやる」


『信用できねぇwww』


「行くぞ」


踏み込む。


「――はあああ!!」


まずは《グレイ・ファング》。


速い。


だが――


「……見えてる」


回避。


カウンター。


――ザンッ!!


「一体」


崩れる。


「次」


《シャドウ・ルーカー》が背後から来る。


「そこだ」


振り向きざまに斬る。


――ザシュッ!!


「二体」


「すご……」


アカリが呟く。


「動き、全部読んでる」


「読んでるんじゃない」


最後の一体を見る。


「“知ってる”だけだ」


《ケイブ・デヴァウア》が突進してくる。


「終わりだ」


最短で動く。


――ドンッ!!


一撃で沈める。


「三体」


静寂。


『強すぎて草』


「……これ」


セラが真剣な顔で言う。


「完全に戦闘の質が変わってる」


「ああ」


ナイフをしまう。


「もう“力任せ”じゃない」


「情報で勝てる」


その時。


――ピィィィン


また、強い反応。


「……っ!」


今までとは違う。


明らかに、強い。


「ユウマ?」


「……来るぞ」


ゆっくり振り向く。


通路の奥。


そこに立っていたのは――


人影。


「……人?」


アカリが呟く。


だが。


違う。


見える。


はっきりと。


【個体名:蒼刃の来訪者ブルー・エッジ

【所属:外部管理領域】

【脅威度:???】


「……っ!」


『海外勢きたあああああ』


そいつは、ゆっくりとこちらを見る。


そして。


「――見えているのか」


初めて。


“対話する相手”が現れた。

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