「もしもある日突然、自分が丹精込めて作り上げた『理想のゲームキャラ』になってしまったら?」
ゲーマーなら誰もが一度は妄想する夢ではないでしょうか。けれど、それが現実になってしまったら……。そんなワクワク感と同時に、強烈なリアリティで読者の心を掴んで離さない新感覚の現代ファンタジー、それがこの「アバターパンデミック」です。
ある朝、世界中の人々が突如アバターの姿に変わってしまう謎の現象「アバターパンデミック」が発生。安定した地方公務員を夢見る平凡な男子大学生・ミツルも、自らが愛してやまないオンラインゲームの超絶美少女キャラ「ウェリザ」に、ゲーム内のチート級の戦闘能力そのままに変貌してしまいます。普通ならここで異能無双して喜ぶところですが、ミツルの根っこは超・事なかれ主義。なんとか平穏な日常を取り戻そうとしますが、圧倒的な美貌とゲーム由来の洗練された所作が、周囲に「底知れぬ傑物」という大きな勘違いを生んでいきます。結果、本人の意思とは裏腹に、アバター犯罪 に対処する政府の極秘組織「APCD」へスカウトされることになってしまい……。
この「内面の小市民っぷり」と「外面の圧倒的カリスマ性」のギャップに、読者は「違うんです、中身はただの公務員志望なんです!」と心の中でツッコミを入れながら、不本意ながらも困っている誰かのために動き、その存在感だけで場を制圧してしまう彼女(彼)の姿に、気付けば胸を熱くさせられることでしょう。
さらに本作は、異能力を得た世界を、戸籍やジェンダー、雇用問題といったリアルな社会問題と絡めて丁寧に描いている点も大きな魅力です。「もし現実にこれが起きたら」という解像度の高さが、物語に深い没入感を与えています。
思い描いた平凡な未来を失い、謎めいた留学生「リザウェル」として新たな人生を歩み始めた主人公。彼女の不器用で優しいネゴシエーションと、ついに動き出すアバター犯罪との緊迫の対峙。笑って、共感して、最後は最高にクールな展開に痺れる、読めば絶対にこの不憫で規格外な美少女を応援したくなる、必読の一作です。