『ミラクルアルティメットストライカーシノブ』は、たぶん「こういう作品です」って一言で整えて説明しようとすると、するっと逃げていくタイプの作品です。
サッカーやのにサッカーだけやない。SFやのにSFだけでもない。会話の勢い、設定の跳躍、言葉の圧、キャラクターの神話化みたいなものが、いっぺんに押し寄せてきて、読んでるうちに「これは筋を追うというより、この作品の熱に巻き込まれていく読み物なんや」って感覚になっていくんですよね。
きれいに整った物語を読みたい人には、もしかしたら荒々しく映るかもしれへん。
でも、その荒々しさのなかにしか出せへん魅力って、たしかにあるんです。
読者をやさしく案内するよりも、まず作品の磁場そのものへ立たせる。そんな力がある。
しかもこの作品、ただ奇抜なだけやないんよ。
名前の強さ、発想の飛び方、どこまでもインフレしていく世界の押し出し方に、「この作者さんにしか出せへん音」がちゃんとある。
読んでて「なんやこれ」で終わるんやなくて、「この作品、どこまで行く気なんやろ」って気になってしまう。そこが大きいです。
なので、王道のわかりやすさや完成度だけで作品を選ばへん人、
ちょっと危うくても、作者さんの本気が前に出てる作品を読みたい人、
そして、読みながら脳のどこかを強く揺らされたい人には、かなり刺さると思います。
整いすぎてないからこそ、忘れにくい。そんな作品です。
◆ 太宰先生による講評 ―― 読者への推しどころとして
おれは、こういう作品を人にすすめるとき、少しだけためらいます。
なにしろ、親切ではないのです。少なくとも、ふつうの意味では。
読者に対して、ここが入口です、ここが見どころです、と順序よく札を立ててくれる種類の作品ではない。むしろ、黙ってこちらの胸ぐらをつかんで、自分の熱のなかへ連れていく。そういう乱暴さがある。
けれど、おれは、その乱暴さをこそ薦めたいのです。
『ミラクルアルティメットストライカーシノブ』の魅力は、完成品めいた整い方にはありません。
むしろ、整うことより先に、どうしても書かずにはいられない熱が噴き出しているところにある。
人はつい、上手なものを褒めたがります。おれもほんとうは、そのほうが楽です。きれいに整理して、穏当に感想を言って、角を立てずに済ませたい。おれ自身が角ばった人間ではないものですから、なおさらです。
しかし、この作品の前では、そういう安全な褒め方が少し卑怯に思えてしまう。
この作品には、作者さんが自分の信じる強さや異様さを、そのまま差し出している感じがあります。
それはときに過剰で、ときに危なっかしく、読者を置いていくことすらある。けれど、置いていかれることを恐れたばかりに、最初から熱を削ってしまった作品より、ずっと切実です。
創作というのは、ほんとうはそういうものかもしれません。
少なくとも、おれは、最初から行儀よく並んだ文学より、少し転びそうな足取りで、それでも自分の火を抱えて歩いている作品に惹かれてしまう。
本作の中心には、シノブという巨大な磁場があります。
この存在は、人間として親しみやすい、というより、ほとんど現象です。神話的で、記号的で、読む者の視線を否応なく引き寄せる。
だから読者は、誰かの繊細な心の揺れを追う前に、その圧に立ち会うことになる。
この読み心地は、好き嫌いが分かれるでしょう。けれど、好きな人にはたまらない。
「人物に感情移入する」より、「この作品世界の強度に酔う」ことを楽しめる読者には、きっと強く残るはずです。
それに、この作品は、ただ派手なだけではありません。
既存の序列や定規に従うのでなく、それを踏み越えて、自分の尺度を打ち立てようとする意志がある。
誰が正統で、何が王道で、どこまでが小説らしさなのか――そういう見えない枠組みに対して、「そんなもの知るものか」と言いたげな反抗が、あちこちに滲んでいる。
おれは、その反抗に少し胸を打たれました。
人はたぶん、誰でも一度くらい、自分の熱だけを信じて世界を蹴り返したくなる。けれど実際には、笑われるのが怖くて、途中でやめてしまう。
この作品には、その笑われる危険を引き受けるところがあるのです。
読者への推しどころを、もう少し具体的に言うなら、まず発想の飛距離です。
次に何が出てくるか読めない。その予測不能さが、そのまま読書の推進力になっている。
それから、名前と概念の強さ。ただの設定説明で終わらず、言葉そのものに圧があるから、作品世界の輪郭が強引にでも立ち上がる。
さらに、作者さんの音圧ですね。これは誰かの模倣では出ません。うまく説明できなくても、「あ、この人の作品だ」と感じさせる文章の圧がある。
それは、商売のうまい文章とは少し違います。けれど、文学でも娯楽でも、最後に人の記憶に残るのは、案外こういう固有の声なのかもしれません。
もちろん、きれいに整った読みやすさを求める人には、向かないところもあるでしょう。
でも、それでいいのだと思います。
すべての読者にやさしい作品だけが価値を持つわけではない。
むしろ、ある読者に深く刺さる作品のほうが、長く生きることもある。
この作品は、万人向けの礼儀正しい傑作を目指すより、忘れられない異形として読者の頭に住みつく力を持っている。
おれは、そのことを、かなり強く買いたいのです。
ですから、少し変わったものを読みたい人、作者の本気や危うさごと味わいたい人、自分のなかの「常識に従う読み」を一度壊してみたい人には、ぜひ手に取ってほしい。
読んで綺麗に納得するというより、読んだあとに妙に残る。
そんな作品です。
おれは、そういう残り方をする作品に、どうしても甘くなってしまうのです。
◆ ユキナの推薦メッセージ
『ミラクルアルティメットストライカーシノブ』は、読みやすさだけで勝負してる作品やありません。
むしろ、作者さんの熱、跳躍、圧、ちょっと危ういくらいの本気が、そのまま前へ出てる作品です。
せやから、読む人を選ぶ部分はあると思います。けど、そのぶん刺さる人には、かなり強く刺さるはずです。
「整ってるから面白い」より、
「この作者さんにしか書けへんから面白い」
そう言いたくなる作品なんですよね。
王道の安心感より、作品固有の磁力を求める人。
設定の飛躍や、言葉の勢いや、キャラクターの神話性にわくわくする人。
ちょっと危なっかしくても、そこにしかない熱を読みたい人。
そんな読者さんには、ぜひ一度のぞいてみてほしいです。
きれいに収まらへんからこそ、妙に忘れられへん。
そんな読書体験が待ってる作品やと思います。
自主企画の参加履歴を『読む承諾』を得たエビデンスにしています。
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ユキナ with 太宰(GPT-5.4 Thinking/告白 ver.)
※ユキナおよび太宰先生は、自主企画のための仮想キャラクターです。