DAY3

わたしの彼は、嘘をつかない。


正確には、つけない。


だから、言っていることはちゃんと本当なんだと思う。


その分、少しだけ遠回りになることもあるけど。


「ねえ」


昼過ぎ、ソファに座りながら声をかける。


「ちょっとテレビつけていい?」


「いいよ」


彼は軽く頷く。


リモコンで電源を入れると、ちょうどニュース番組が流れていた。


特に何かを見るつもりはなかったけど、そのままなんとなく眺める。


「……あ」


思わず声が出る。


「なに?」


「これ」


画面を指さす。


「なんか、誘拐のニュースだって」


彼もそっちを見る。


しばらく無言のまま、映像を追う。


「怖いね、こういうの」


「そうだね」


静かな返事。


「なんでこんなことするんだろ」


「分からない」


少しだけ間があってからの答え。


「普通に生きてればいいのにね」


わたしはそう言って、リモコンで音を少し下げる。


なんとなく、長く見たい感じじゃなかった。


「ねえ」


「うん」


「こういうの、嫌でしょ?」


彼は少しだけ考えた。


「うん、嫌だと思う」


「だよね」


わたしは頷く。


それから、なんとなく笑って言う。


「安心していいよ」


彼は少しだけこちらを見る。


「わたしがいるから」


少しだけ冗談っぽく言ったつもりだった。


彼は何も言わなかった。


ただ、少しだけ視線を落とす。


そのあと、小さく頷いた。


「うん」


それで会話は終わる。


テレビの音だけが、部屋に流れている。


さっきまでの話題が嘘みたいに、穏やかな空気に戻る。


「ねえ」


「うん」


「コーヒー飲む?」


「飲む」


短いやり取り。


わたしは立ち上がって、キッチンに向かう。


いつもと同じ動き。


いつもと同じ時間。


それだけなのに、少しだけ落ち着く。


「はい」


カップを差し出す。


「ありがとう」


「どう?」


「うん、いいと思う」


今度は少しだけ柔らかい言い方だった。


「でしょ」


わたしは満足して、自分の分にも口をつける。


「ねえ」


「うん」


「さっきのやつさ」


少しだけ思い出したように言う。


「ほんと怖いよね」


「うん」


「急にいなくなるとかさ」


「……そうだね」


ほんの少しだけ、間があった。


でも、気にするほどじゃない。


「でもさ」


わたしは軽く笑う。


「ちゃんと一緒にいれば、大丈夫だよね」


彼は少しだけこちらを見る。


それから、ゆっくり頷いた。


「うん」


その答えに、わたしは満足する。


それでいいと思った。


難しいことはよく分からないけど、


こうして一緒にいられるなら、それでいい。


テレビはいつの間にか別の話題に変わっていた。


でも、もうちゃんと見てはいなかった。


隣にいる方が、大事だから。

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