第29話 君主たる者は、ケチだという評判を怖れてはならない。

君主たる者は、ケチだという評判を怖れてはならない。

何故なら、この「悪徳」は、自国の金庫を空っぽにすることがない。

かといって、略奪者にもならず、それでいて統治を続けていくための、必要な「悪徳」だからである。


「君主論」


マキアベリ氏は、「ケチ」という悪徳は、君主が国家財政を健全に保ち、その後の重税(略奪)を避けるために「必要な悪」であると述べている。

気前の良さは短期的には美徳に見えても、やがて国家を破綻させ、民衆の憎しみを招く危険があるためである。


気前良く振る舞うには国庫から多額の支出が必要になり、それを続けると国家財政が破綻するリスクが高まる。

そのリスクが目前に迫ると、財政を補うために重税を課すようになる。

結果として民衆に憎まれ、国家は弱体化する。

逆に、「ケチ(倹約)」は悪徳に見えても、国家の金庫を空にせず、民衆に重税を課さずに済むため、長期的には善となると述べている。


◆ 具体例

① 歴史的な例:財政破綻を招いた「気前の良さ」

フランス王ルイ14世の宮廷の贅沢は、国威を示す目的で行われたが、莫大な支出が財政を圧迫し、後の重税・国家債務の増大につながった。

これはマキアベリ氏の言う「気前の良さが国家を貧しくする」典型例とされている。


② 逆の例:倹約が国家を救ったケース

プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世は極端な倹約家だったが、その節約によって軍備を強化し、後のフリードリヒ大王の時代の強国化の基盤を築いた。

これは「ケチが長期的には国家への善になる」というマキャベリの主張に合致する。


③ 現代的な例:企業経営における「必要な倹約」

 マキアベリ氏の警句は、企業にも応用が可能である。

 過度な福利厚生や豪華なオフィス投資 は、 一時的に社員の満足度は上がるが、企業財務を圧迫し、後にリストラや給与削減を招くリスクが高い。

 また、堅実なコスト管理(=ケチと批判されることもある) は、企業の 財務基盤が安定させ、景気後退時にも社員の雇用を守ることができる。


つまり、短期的な人気取り政策の実行より、長期的な安定を優先する姿勢が「必要な悪徳」として肯定される。

マキアベリ氏は、君主は“見かけの美徳”より「国家の持続」を優先するべきで、ケチと呼ばれても、民衆に重税を課さず、国家を守れるなら、それが真の美徳である、とする。。


確かに目先の快楽優先、放漫経営で倒産に陥った企業も実に多い。

家計や、自分の財布においても、全く同じ。

入って来る収入以上に使い続ければ、やがては当然、破産する。

「ムダな金を使うな」は、やはり時代を超えた警句と思う。

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