第25話 武装せる預言者は、
武装せる預言者は、みな勝利を収め、非武装のままの預言者は、みな滅びる。
なぜなら、民衆の気分は変わりやすく、言葉での説得ではついて来させることができなくなった場合は、力でもってそれをさせる必要があるからだ。
「君主論」
マキアベリ氏が言いたいのは「暴力を使え」という単純な話ではなく、政治的リーダーシップの本質についての冷徹な分析である。
「新しい秩序を打ち立てようとする者は、言葉だけでは支持を維持できない。
だから、実行力(=強制力)を持たない預言者は滅びることになる。
さて、ここでの「預言者」は宗教家ではなく、「新しい価値観・制度・秩序を提示する改革者」 の比喩になる。
例えば、 「武装せる預言者」とは何か
マキアヴェッリが例に挙げるのは、
・モーセ
旧約聖書の登場人物。預言者。『出エジプト記』で神から「十戒」を授かった。
神の啓示を受けイスラエルの民をエジプトからカナンの地へ導いた。
・キュロス
紀元前6世紀中ごろ、アケメネス朝ペルシアを建国し、前538年には新バビロニアを亡ぼしてメソポタミアの統一を達成した。
・ロムルス
紀元前753年、ロムルスはローマを建国し初代国王となり、軍事組織や元老院の制度を整えた。
など、新しい国家や秩序を作った人物。
彼らは皆、①理念(言葉)、②軍事力(実行力) の両方を持っていた。
マキアヴェッリの主張は、理念だけでは人は動かない。
理念を実現する力があって初めて、改革は成功する。
なぜ「非武装の預言者」は滅びるのか。
理由は、 民衆の気分は変わりやすい。
「人は利害で動き、気分で離れる」のである。
だから、最初は熱狂的に支持してくれても、状況が変わればあっさり裏切る。
結局、 言葉だけでは支配は続かない
民衆が離れたとき、それでも秩序を維持するための力が必要になる。
ここでいう「力」は、軍事力だけでなく、制度・警察力・法の強制力・組織力なども含む、広い意味の「実行力」になる。
. マキアベリ氏の本意は、暴力礼賛ではなく、「暴力を使え」と言っているのではない。
理念を実現するには、実行力が必要であり、「良いことを言うだけの理想主義者」は、現実の政治では必ず敗北する。
民衆の支持は不安定だから、理念 × 実行力 の両方を持つ者だけが成功すると、説く。
現代政治に置き換えると、
「武装」は次のように読み替えられる。
法制度の整備、組織力、実行する行政能力、経済力、国際的な後ろ盾、情報統制・広報戦略。
つまり、「言うだけ」ではなく「実行できる体制」を持つ者が勝つ 、という普遍的な法則を述べているのである。
理想を掲げるだけでは人はついて来なくなる。
理想を実現する力を持つ者だけが、歴史を動かす。
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