「その安さには、理由がある。」
という強烈な引きの強いキャッチコピーから始まる本作は、単なる事故物件紹介に留まらない、人間の業と悲劇が交錯する重厚なホラー小説です。特に第13話「借金苦で自殺した豪邸」は、物理的な凄惨さ以上に、遺された命の「孤独」が胸を締め付ける屈指のエピソードでした。
物語の魅力は、対照的な二人の主人公にあります。怪異を「気配」や「痕跡」として五感で直接体験してしまう新人・千堂。そして、それらを冷徹に見つめるベテラン・小林。
千堂が物件に足を踏み入れた瞬間に追体験する描写は秀逸で、読者は彼女の目を通じ、現実の汚れと過去の惨劇が重なり合う不気味な多層世界へと引きずり込まれます。
第13話では、豪邸という煌びやかな舞台が、住人の死によってペットたちの哀しい念が描かれます。特殊清掃によって物理的な死臭が消えても、千堂の鼻を突く「苦い臭い」。それは、死にゆく飼い主と、扉の向こうで取り残された命の絶望が混ざり合った「執着の匂い」に他なりません。
「なんで帰ってこないの」という、言葉にならない感情の流入。ラストシーンで窓の奥から千堂を見つめる猫の視線は、もはや恐怖を超え、救いようのない虚無を突きつけてきます。
事故物件の真の恐ろしさは、幽霊そのものではなく、そこに「かつて生があった」という残酷な事実であることを再認識させる名作です。
作者さんの観察力、恐怖の描写はかの名作映画「シックス・センス」をみた時のような「これ、見えてる人が書いてるよね……」というようなリアルさがあります。
そこのあなた、お引越しをされる際「告知事項あり」の文字をみつけてこの小説を思い出して欲しい。