第3話
「で、駆けつけた
「……えっとあの、ドラマチックというか過ぎて、話が入ってこないんだけれど……」
カンナの能力も聞いていた話と違う上に、なんだか色々超次元な話が飛んできて、
「それに最強っていうのも譲った方がいい気が……」
「――いや、あなた無尽蔵に
「すまん、起こしたか」
「単純に目が覚めただけなのでご心配なくなのです」
むくり、と起き上がったカンナは、思い切り伸びをしながらやや不満げにそう言うと、会田にくっついてその肩に頭を預けた。
「私ってそうなんだ……」
「仮にも最強と自覚されているなら、そこは自己分析しておくべきなのでは?」
「無理言うなよ、好戦的の対義語みたいなやつだぞコイツ」
「はーん、持てる者特有の余裕ってやつなのです?」
「申し訳ない……」
「いや、ちょっと分かりにくいかもしんねけど、コイツお前が力の扱いをミスって酷い目に遭わないか心配してんだよ」
いつも通りチクチクと繰り出されるイヤミに、いちいち真に受けてしょげる紅音へ、会田は目を細めてカンナの頭を撫でつつその意図を読み取って伝えた。
「だろ?」
「そうなのかい? ありがとう」
「……」
少し目を見開いてから、クスッと微笑混じりに紅音が言うと、口をへの字に曲げて顔を逸らしてはいるが、やや口の端が緩んでいるカンナは無言で否定はしなかった。
そのタイミングで通知がサイレントで表示され、今から帰る、という
「それじゃあ、そろそろ失礼させて貰うよ」
「おう。またなんかあったら遠慮無く相談してこい」
それを見た瞬間、目を輝かせてにこやかな表情になり、会釈した紅音がやや早口でそう言うと、会田は顔の横辺りでスッと手を挙げて返すと自分から通話を切った。
ややあって。
「お帰り。ひーちゃん」
「はーやれやれ。
刀袋を肩に担いだパンツスーツ姿の瞳が帰ってきて、疲れ切った顔で飼い犬の如く玄関で待っていた紅音を見ると、彼女は安心した様子でフッと笑いながらぼやく。
紅音の部屋は照明どころか、エアコンも使っていないので冷え冷えしているが、瞳の方はつけっぱなしで出たので快適な温度になっていた。
「敵の首領本体はまあ雑魚だったんだけど、そいつ召喚術使えるやつでね、気色悪いクソデカガエル喚んだの」
「それ多分、雑魚って言う程じゃないんじゃないかな……」
刀を寝室のクローゼットに入れつつ、しれっと緊急出動レベルの相手を雑魚呼ばわりする瞳に、紅音はちょっと引き気味に苦笑する。
一応、支配級に片足を突っ込んでいる程度の吸血鬼ではあったが、不意でも突かれない限りは大体敵無しの瞳には、キッチンに湧いた小バエの方がまだ厄介だった。
「ま、丸呑みとかされたの……?」
「そんなヘマ私はしないから。まあ新人ちゃんがパクッと行かれてたかな」
「ええ……」
「まあさっさと腹かっさばいたまではいいんだけど、そいつ中身がほぼ粘液で、身体突っ込んで引っ張り出したらもう全身ヌルヌルになってね」
服だけ溶かすタイプだったらスッポンポンよ、などと開けっぴろげすぎる発言をする瞳に、紅音は自分の方が恥ずかしそうに咳払いをする。
「まあカエルじゃなくてスライムの類いで、切ったら増えたもんだから、とりあえずその辺の鉄パイプでぶん殴ってなんとかしたわけ」
「……ひーちゃん、それなら打撃武器持ってきて貰うまで待てば良かったんじゃ……」
「下着の中までヌルヌルなのに紅音はそんな待てる? もう秋も終わりの夜中に」
「あー、まあそれは……」
なんか媚薬成分とか入ってたみたいだし、さっさと終わらせて正解だったわ、と言って着ている服を適当に脱ぎ捨てた瞳は、2人だけでもそういうのはどうかと思う、と眉間にシワを寄せた紅音に怒られた。
「じゃあもうお風呂入ってきたんだね」
「シャワーだけね。本当は湯船にも浸かりたかったんだけど」
「もう溜めるだけにしてあるけど入る?」
「一緒に?」
「スケベな事しないならいいけど」
「……。バレたか」
「あのねえひーちゃん。毎度のことだけれど、注意する側が逆だと思うんだ」
邪な考えをジト目で見抜かれた瞳は、回収した衣服を小脇に抱えてヘラヘラした顔で白状し、自身に顔を向けたままお湯張りボタンを押した紅音から追加で説教を食らった。
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