魔王を討った剣は、英雄の魂を永遠に輪廻から切り離した。世界を救ったはずの瞬間が、取り返しのつかない罪の始まりだったとは——読み終えてから、タイトルの意味がじわりと変わる。
聖女と呼ばれる彼女が禁忌を犯したのは、信仰のためでも世界のためでもない。ただ一人の人間を失いたくなかった、それだけだ。
禁忌とは何か。大切な人を失うその瞬間に、それは本当に抑止力になるのだろうか。使ってはならないというのなら、なぜその力は地上に降りたのか。天は人の子に、何を望んでその力を与えたのか。
その問いを抱えたまま、彼女は二十年後も剣を抱えて逃げ続けている。英雄譚の皮をかぶった、罪と喪失の物語。