第14話 愚痴と女神の悩み相談
「ハァ〜……。リヒト様、迎えにきてくださりありがとうございます」
「また遅くなってしまったかな?」
「大丈夫です。ちょうどいいタイミングでした。どうやって退出するか考えていたところです」
「それなら良かった。しかし、宰相が心配していたのは確かだ」
「はい。顔を見せてから帰ることにします」
「そうしてくれ」
そういうと、リヒト様は少し微笑んだ。
(あら、笑えるじゃない)
私は変に感動しながら笑顔を返した。
「お父様、リヒト様を迎えに出してくれてありがとうございます。とても助かりました」
「ああ。王妃に捕まると、なかなか解放してもらえないだろうと思ってな。お茶会が終わったのにジュリアの姿が見えないと聞いたので念の為行かせたが、役に立って良かった」
王城にあるお父様の仕事部屋へお邪魔をしている。
さすが宰相の部屋だけあって広さがあるが、働いている人も多くいかにも有能です!といった感じの人たちだ。
「お父様の予想通りなことを言われました。もちろん打ち合わせどおり返しましたが、きっと迎えにきてもらえなかったら、強引に自分の要望も押し切ろうとしてきたかもしれません」
「やりそうなことだな」
「私では断りきれなかったと思うので、本当良かったです。でも、マリカ様の元に行くことになってしまいましたが……」
「ああ、そうだな。でも、直ぐではなくて良い。予定を合わせて動けば良かろう」
「はい」
王妃を相手した後にすぐ、マリカの相手をするのは心がすり減りそうなので、そう言ってもらえるとありがたいわ。
「それはそうと、ジュリアも立食パーティーでの料理は口にしたかな?」
「料理?マリカ様が作らせたという料理ですか?」
「それだ。どうだった?」
「どうと言われても……。えっと、素材の味を生かした健康的な味付けでした」
「ふっ。そうか」
父に笑われてしまった。だってそう表現するしかないもの!
「も〜、笑わないでください!」
「いや、言い得て妙だなと思ってな。実は噂を聞いた王もその料理を食べたのだが、味の薄さに閉口していた。そして以前のハンバーグも彼女の提案で作られたと言うことを知ったのだ」
「あら、ではアンドリューはどうなりますの?」
「首にした料理番を戻しても良いと言うことになったので、アンドリューには希望を聞いてどうするか決めてもらう」
「彼は腕の良い料理人のようですし、他の料理人とも仲良く仕事ができているようなので、侯爵家に残ってもらえると嬉しいのですが」
「そうだな。だがそれは、彼次第だ」
そうしてしばらく話をした後、侯爵家へ戻った。
もちろん、侯爵家の馬車までリヒト様がエスコートしてくれた。
王城内を一人でいると、王妃の関係者に呼び止められるかもしれないものね。ありがとうございました。
ちなみにアンドリューは、そのまま侯爵家の料理人として残ってくれることになった。
◇◇◇
それからマリカとの予定を調整し、面会日が決まった。
そして今、私は教会に来ている。
マリカと会う前に、なんで巻き込んだのが彼女だったのかとか、神同士の交渉はどうなっているのかとか、一度胸の内を曝け出して浄化させようかと思って。
そうでないと、マリカと穏やかな気持ちで向き合うことが出来なさそうだから。
つまり、女神様に愚痴を言いたくなったのだ。
それぐらいは許してもらいたい。
(くしゃみは自然現象ですし仕方がないことですけれど、それでも文句は言わせてください!歴代の「女神の客人」の方々は、おとなしい方や思慮深い方だったと資料にも残っています。そのような方々であれば、こちらも最良の接客でもてなすのになんら文句はありません。ですが、マリカは目に余ると思うのです!)
『そうよね〜』
(もちろん巻き込まれてここに来てしまったのですから、マリカに非はないしわがまま言いたくなる気持ちもわかるけれど、それにしても、周りの人々への配慮が足りないと思うのです。直接会ったのが短時間な私でもわかったのだから、侍らなければならない人々はもっと大変な思いをしているのでは?)
『わかるわ〜』
(それに、マリカが来てからだいぶ経ちましたが、神同士の交渉というのはこんなに時間のかかるものなのでしょ……。あ、あれ?)
女神像の前で祈りのポーズをしながら、今まで思っていたことを心の中で爆発させていたのだけれど、なぜか返事が返ってきていたような?
『そうなのよ〜。実は揉めていてね〜』
(え……!どなたでしょう!?)
『あなた達の言うところの、くしゃみ女神よ。でも私だって、したくてしているわけじゃないのよ』
(め、女神様!)
え、本物!?うわっ、私思いっきり愚痴を言ってしまったのだけれど!
『私も困っているのよ〜。ちょっと聞いてくれる?』
(え、あの……、私で良ければ……)
『そう?ありがという!実はね、彼方の神と会ったら無茶苦茶怒っていて。いい加減にしろって言われちゃったのよ。そりゃぁ、何回も迷惑をかけちゃっているから怒られるのは覚悟していたけど。しかも今回巻き込んじゃった子は、国に影響を及ぼす存在だったみたいで、返せって言われちゃった』
(え、マリカってそんな重要な存在だったのですか?では元の世界に戻るのですね)
『だから、落とし子の夢にアクセスして元の世界に戻すって言ったの。そうしたら何て言ったと思う?』
(喜ぶところではないのですか?)
『でしょ?そう思うでしょ??でもあの落とし子、戻りたくないって言ったのよ。このままこの世界に居たいって』
(え……。そうなのですか?何故……?)
『どうやら、元の世界で男に貢いでいたみたいなの。推し活?とかいうのをしていたのですって。でも頻繁に会いに行くにはお金がないといけないから、夜のお仕事とやらで接客業をしていたとか』
(え……、マリカってホストクラブに入れ込んでいたのですか?いや、推し活だとアイドルに貢いでいたとか?夜のお仕事ってキャバクラとかパパ活とかそういう?)
『そうそう。多分それそれ。でもこの世界では、高いお金を払わなくても貢がなくても、さまざまなタイプの男たちがチヤホヤしてくれて大事に扱ってくれるから、戻りたくなくなっちゃったみたい』
(ああ……なるほど……。それにやっぱりマリカは、20歳を超えていたのですね?)
『そうそう。大学を卒業して就職したそうだけれど、お金が足りなくていろいろやってたみたい。面食いみたいで、商売と分かっていても顔のいい男に優しくされたら、好きになっちゃうらしいわよ』
(あらぁ……)
では、セーラー服っぽいものを着ていたっていうのは、夜のお仕事の服?
薄い服で、ヒラヒラした丈の短いスカートっていうのも合点がいったわ。
普通は学校指定の制服って、それなりに厚みのある服なはずだものね。
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