分類はホラーですが、人を想う気持ちは官能的ですらあります。もっと息遣いを知りたい。もっと心の渇望を知りたい。もっと肌触りを知りたい。そういったタブーに触れたくなる、自分の心を見せる鏡のような作品に思えました。
語られるのは、一人の女性の小学生時代。彼女がピアノの前に座って見ていた、あの日の情景。トラウマ的な体験は、何十年もたってその人に福音をもたらすことがある。幸福の絶頂かと思えるような瞬間が、後々までその人を呪い蝕んでいくこともある。そんな人生の矛盾について、思いをはせたくなる短編小説でした。サイコホラーとして人間の陰湿さに焦点を当てていながら、それでいて文章から強烈にたちのぼるナイーブな品性のようなものが胸を打ちます。素晴らしい作品でした。本当にありがとうございます。