「昆虫の目線で世界を見る」という一行が、物語全体の鍵として最後まで機能している構成の巧みさに唸りました。異世界転落的な恐怖描写は生々しく、巨大アリの質感や腐臭の描写に体が強張りましたが、そこから脱出する論理が「ファーブルの教え」という作品内の文脈で完結しているのが秀逸です。ラストの「本当に夢だったのかな」という問いへの無言の微笑みも、余韻として申し分ない。虫を踏み潰す側から踏み潰される側へ――その転倒が、道徳の押しつけにならずに物語として着地している一作です。