魔除けの石
大富豪のエヌ氏が、非常に力の強い魔除けの石を購入した。
見た目は、アメジストをより色濃くしたような感じ。机に置いているだけでも言い知れない存在感を放っていた。
「これで枕を高くして眠れるぞ」
エヌ氏はうきうきと言った。というのも、ここのところエヌ氏は悪夢をよく見るのだった。エヌ氏は大富豪らしく、恨みを買うことが多い。とはいえ、襲撃者なんかであれば大邸宅のセキュリティでいくらでも防ぎようがある。けれど、呪いなどを送られるとどうしようもない。現代でそんなオカルト、などと侮るなかれ。庶民が知りえない社会の上澄みにこそ、“ホンモノ”の呪術師やら超能力が存在するのだ。
だからこそ、この石。
アフリカの秘密シャーマン部落から買い取った、最強の盾だ。
エヌ氏は魔除けの石をネックレスにして、肌身離さず過ごした。
そして、石を買ってから三日後。
太陽がのっそり顔を出してきた朝。エヌ氏は怒声を上げながら体を起こした。かと思えば、ネックレスを引きちぎって、窓を開け、力の限り庭へ投げ捨てた。
すごい剣幕であったから、妻も驚いて目を覚ました。
「何をなさるんですか。あんなに高かったのに」
「どうもこうもない! こんなもの身につけてられるか!」
「まぁ。まさか、ニセモノだったのですか」
「ちがう! あれは間違いなく、本物だ!」
「じゃあなぜ……」と妻が困惑すると、エヌ氏は泣き出しそうな顔で振り返った。
「睡魔がやってこんのだ! このままでは死んでしまう!」
その眼の下には、あの石よりも色濃いクマ……。
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