ミステリー好きが思わず反応してしまうパワーワードに満ちた、珠玉の中編。
ミス研の二人が演劇部の合宿に参加することになる冒頭から、演劇部員たちのあいだに漂う心理的な息苦しさと、台風によって帰路を断たれる物理的な閉塞感が同時に立ち上がっていくセットアップが見事で、一気に物語世界へ引き込まれました。
物語中盤、演劇部顧問が密室となった部屋で死亡していることが発見され、不穏さはいよいよ頂点へ。三竹の観察から何らかの物理トリックが示唆されたところで、出ました、「読者への挑戦状」。
もちろん正解はできませんでしたが(恥)、読み返せば確かに辿り着けるはずだと思えるだけのフェアネスも、きちんと確保されていました。
そして明らかになる真相と、歪んでしまった犯人の献身。その痛ましさが、解決後にも静かな余韻を残します。
シリーズ作品ではありますが、ミステリー好きなら単独でも十分に楽しめる、ミステリー愛に溢れたエピソードでした。
演劇部の脚本監修という依頼から始まり、合宿という閉鎖的な環境がそのまま「クローズドサークル」としての緊張感に転化していく構成がうまいと思いました。レビューで「落ち着いた文体で積み上げられるロジック」と評されている通り、密室や疑惑が積み重なっていく過程が丁寧で、本格ミステリーらしい読み応えがあります。
「読者への挑戦」という話を挟む構成は、フェアプレイを重視する古典的なミステリーの形式を踏襲していて、読者自身も三竹や京子と一緒に推理する楽しさを味わえる作りになっています。「招待」から「異変」「混迷」「真相」と進む話タイトルの流れも、緊張が高まっていく過程を端的に表していて読みやすいです。
ローズガーデン事件からの地続きの関係性も含め、シリーズを重ねるごとに重みを増していく三竹と京子の信頼関係が、ミステリーとしての骨格をしっかり支えている一作だと思います。