第14話 自分に適した武器を探しに

 東の工業区に入る。ここには沢山の武器屋や防具屋がある。楽器店くらいにしか来ないので、どの店がどういうものなのかが分かりづらい。


「武器に癖があったりするから、普通の武器を売ってる場所に行かないとね」

「く、癖ですか……?」

「うん。何というか……形が特徴的すぎて普通には使い辛いっていうのがあるみたい。私の双剣は片方が短剣で片方が長剣って感じだよ」


 癖は武器の形や防具の形の事みたい。人によっては、癖があった方が使いやすいという変わった考えを持つ事もある。基本的には、シンプルな形の方が使いやすいはず。


「リラさんは、どの武器が良い?」

「え、えっと……武器……」


 フォルティさんが近接武器で戦うようなので、こちらは遠距離で対処する方が良いかもしれない。遠距離武器の最大の欠点は攻撃手段が消耗品となる事。


(矢が尽きれば、弓持ちはただの案山子だ。それなら普通に近接武器で戦う方が良い。槍とかが一番サポートしやすいかな)


 そんな事を考えながら周囲をキョロキョロと見回していると、路地裏の向こうに気になるものが見て足を止めてしまった。フォルティさんはすぐに気付いたのか、ほぼ同時に止まった。


「どうしたの? 気になる武器があった?」

「あ、い、いえ、す、すみません……」

「ううん。それで何を見てたの?」


 反射的に謝ってしまった私に対して、特に気にした素振りもなくフォルティさんは私が見ていた先を見る。


「あれ? あんなところに武器屋なんてあったっけ?」

「し、知らないお店……ですか……?」

「うん。行ってみよ」

「あ、は、はい」


 フォルティさんに引っ張られるので、私も強制的に連れて行かれる。でも、私も少し気になっていたので特に抵抗する事もなくついて行く。

 身体を横にしながら入るしかない狭い道を通っていった先には路地裏にひっそりと佇むお店があった。そこには、私達が目を見張るものが飾られていた。それは、ヴァイオリンなどの楽器だった。


「楽器店……でも、何か違う……」


 私がギターを買った楽器店とは違う何かが感じ取れる。でも、それが何かは分からない。


「楽器のお店? リラさんはここで買ったの?」

「い、いえ、べ、別の店です……こ、ここは知らないお店です……」

「せっかくだし入ってみようか。リラさんが演奏で使えるものがあったりするかもだし」

「あ、は、はい」


 路地裏の楽器店に入っていくと、やっぱり雰囲気が違う。あっちの楽器店は、普通の楽器店に入った時と同じような雰囲気だけど、こっちは何というか……圧があるような感じがしている。


「何か物々しい感じ」


 フォルティさんも同様の印象を受けているみたい。二人とも同じように受け取っている時点で、この感覚は間違いではないと考えられる。


「すみませ~ん。ここの楽器って普通の楽器なんでしょうか?」


 フォルティさんは、奥の方にいるお店の人に対して質問していた。この辺りは京花ちゃんと同じだ。誰とでも一定以上のコミュニケーションを取れるコミュ強。私が目指し挫折を繰り返す極致。眩しすぎる……


「ん? 魔法楽器だ。悪いがあんたは使えないぞ? 普通の楽器を弾く心得がなけりゃな。そっちのお嬢さんは使えるな」

「おお……魔法楽器って何ですか?」

「簡単に言えば、演奏をする事で特殊な事象を引き起こす楽器だ。扱いにコツがいるが、使いこなせれば攻防支援の全てを担える」

「おぉ……ちょっと難しいかもね。リラさん、どうする? リラさんなら扱えるみたいだけど」

「魔法楽器……」


 近くの楽器の値段を見たら、100万マニーと書かれていた。そのせいで息が詰まってしまった。


「っ……」

「高いねぇ……予算は?」

「だ、出せて70万マニーです……」

「楽器の種類は何が良いの? やっぱりギター?」

「も、持ち運び出来れば……」

「じゃあ、ヴァイオリンの方が持ち運びはしやすいかな。あれ? そういえば、リラさんって演奏出来る楽器は? ギターだけだったりする?」

「い、いえ……一通りは……家に色々あるので……ヴァ、ヴァイオリンも一応……」


 最近は弾いていないので、少しリハビリが必要になるだろうけど、一応やっていた事もあるから弾けはするはず。


「70万か……あっ、このヴァイオリンはどう?」


 フォルティさんが見つけたのは67万マニーの真っ黒なヴァイオリンだった。


「試奏お願いします」

「あいよ」


 テキパキとヴァイオリンと弓を渡される。受け取って軽く弾いてみると、意外と音になってくれた。


「中々やるな。後は演奏していれば分かってくるだろ。買うか?」

「あ、お、おおお願いします……」

「あいよ」


 良い感じで演奏出来たから、このままヴァイオリンの魔法楽器を購入する事にした。どう演奏すれば良いか分からないから、ここら辺は実践あるのみみたい。

 魔法楽器には固有の名前がある。これは『黒帝』って言うらしい。

 残り4万マニーになった。ちゃんとお金稼ぎしないと。


「あ、ありがとうございました……お、おかげで買えました……」

「うん。ところで、防具買うお金って……」

「あ……よ、4万……」

「予算四万かぁ……プレイヤーメイドだと揃えられなさそうだね……最初のエリアは初期防具でも大丈夫だろうけど、どうする? 最低限揃えておく?」

「あ、い、いえ、そのまま行きます……」


 さすがにこれ以上待たせるのも申し訳ないし、NPC店での最低限の防具だとあったらマシかなくらいだから、後回しで良いと判断した。


「それじゃあ、先にクエストカウンターに行こうか。お金稼ぎもしないとね。そうだ。因みにだけど、こっちでクエストを受けても次の街で報告出来るよ」


 どうやら一々受注した場所に戻ってこなくても大丈夫みたい。そういうのが助かる。


「取り敢えず、今のリラさんだとクエストが受けられないから、パーティー組もうか」

「あ、は、はい……」


 フォルティさんに教わりながらパーティーの組み方を確認する。パーティーの枠は全部で十二人らしい。多い気がするけど、オンラインゲームだと普通なのかな。


「そうだ。フレンドにもなっておこう。こっちでも連絡出来るから」

「あ、は、はい」


 フレンド登録もする。キューちゃんの他に初めてのフレンドだ。お姉ちゃんとは交換していない。お姉ちゃんが言わなかったから。

 フォルティさんが良さげなクエストを選んで受注する。受注している時に猫にお礼を言いながら撫でていた。


(あの子達が撫でさせてくれる事を初めて知った。今度私もやろうかな。いや、私相手だったら嫌がるか……)


「それじゃあ、初めての戦闘に行ってみようか」

「は、はい」


 フォルティさんに手を引かれて、私はようやくユートアルパの外へと踏み出す。

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