第20話 私たちの夜
「
「うん。勘、かな。」
「勘ですか?」
「なんというか、総合すると勘になっちゃうんだよね。えーと、今まで幽霊を見た人の話しを聞いてみて、
「そうですね、怖いとか気味が悪いとかはなかったです。泣いてる悲しさとか、単に急に出会って驚いたとかでしょうか。」
「うん。私も似たような感じ。三年生や二年生の知り合いにも聞いてみたんだけど、怖いってよりは、驚いたとかの方が多かったの。けれど、一人だけ、幽霊を本当に怖がっている人がいた。」
私も一人だけ思い当たる名前を口にする。
「白鳥先輩。」
「そう。白鳥先輩はとても怖がっていた。ルームメイトの結城さんが心配になるぐらい、体調を崩してもいた。なぜだか考えてみたの。」
そうだ。白鳥先輩はたしか何度も幽霊を見ているようだった。
それに、とても怖がってもいたはずだ。
「こう考えてみたの。白鳥先輩が怖がっていたものはなんだろうか。幽霊だよね。じゃあその幽霊の姿はどんなに姿だったの?白鳥先輩が怖がるものについては、先輩と近しいわけじゃないけど、一つだけ、思い当たるものがある。私たちが調べた裏門の事故と、いなくなったルームメイト。もし、ルームメイトの
しかし、
「良く分かりました。たしかに勘ですね。けど、私もその勘は当たってるように感じます。」
なぜ、何度も見てしまうのか。
そこは言うまでもなかった。
会いたかった。
私の勘も、そう言っていた。
「ひとまず、幽霊を見つけることはできたと思いますが、この後はどうしましょうか。
「あとは、
これまでの予想が正しいとすると、次のような方法があるだろうか。
・視覚遮断装置の撤去。
・視覚遮断装置のAIの修正。
良い案とは思えない。
視覚遮断装置を直接いじる方法は、大掛かりになりすぎる気がする。
あとはモニコンの着用を寮内では禁止にする。
さすがに厳しすぎる規則だし、モニコンの着脱は忘れやすい。
現に、私も外し忘れた。
厳しい規則のわりに、得られる安心が小さい気がする。
そういえば、ミニシスターもAIだと
ミニシスターか。
彼女の力を少しお借りするのはどうだろうか。
「
私の案を元に、
「さすが
だそうだが、さすがに持ち上げすぎだと思う。
とにかく、解決策も整った。
もう遅い時間なので、
もう深夜だ。そろそろ寝よう。
食器を洗って歯を磨いて、二人とも寝る準備を終えて、
「それじゃあ、おやすみ
私も自分のベッドへ向かう。
当然だ。二人の部屋に二つのベッドがあるのだから。
だけど、ちょっと落ち着かない。
自分の枕を持って、
「その、なんと言いましょうか、今日は、
我ながら、しどろもどろで上手に言い訳できていない。
それでも、
私が入る、一人分の隙間。
「良いよ。お話し、しよ。」
「ありがとう、ございます。」
そっと
すぐそこに
いつもの日常に帰ってきたようで、安心して、
「今日は一日お疲れさまでした。たくさん移動されて、お話しもされたんでしょう?」
視覚遮断装置の開発者の方には、思っていたよりも、すんなりお話しいただけたそうだ。
喜花の後ろ盾もあったのだろうが、装置の内容や今後の展望、そもそもの理論など、学術的な討論ができて楽しかったのではないかと、
増田先輩と会うには、まず、今どこに住んでいるかを調べなくてはいけなかった。
これまた個人情報だとは思うが、こちらも喜花の本家に頼んだらしい。
こんな短時間で調査してしまえるのだから、少し怖くなる。
増田先輩は快く会ってくれたそうだ。
白鳥先輩との話もしたそうだが、プライベートな部分が多いため、私には詳しい内容は教えてもらえなかった。
「ごめんね
「気にしないでください。それより、こんなにたくさんの事をされたんですね。本当にお疲れ様でした。むしろお休みの邪魔をしてしまって、ごめんなさい。」
私の言葉に笑って返事をする
「それこそ気にしないで。今日一日、
「何ですか、
おかしな言葉に笑ってしまう。
「私を元気にしてくれるエネルギーだよ。主に
「じゃあ、もっと
「うん。あるよ。少しだけ、触れてくれないかな。私に。」
「…良いですよ。ちょっと恥ずかしい気がするので、目を閉じていてもらえますか。」
「うん。ありがとう。お願い。」
目を閉じる
少し、宙で手を漂わせてから、そっと頭に触れてみる。
サラサラとした手触りで、触れたところから髪が顔の方に流れていく。
ゆっくりと、髪の感触を確かめながら、頭を撫でてみる。
気持ちの良い手触りに、ずっと撫でていたくなる。
「陽子、嫌じゃありませんか?触れられたくないところはありませんか?」
「平気。ありがとう。手、下げても良いよ。」
少し震える手で、
室内灯がゆっくりと落ち始めていた。
ほとんど見えなくなってきた
ピクっと
耳に当たって、くすぐったかったのだろうか。
いい加減、恥ずかしくなってきたので、
「そろそろ元気になりましたか。」
目を閉じたままの
「うん。ありがとう
「どういたしまして。じゃあ、そろそろ寝ましょう。明日、起きれなくなってしまいますよ。」
「うーん。もう少しだけお話ししよう。
「そうですね。いつもとあまり変わらない日だったはずですが、少し、味気ない日でした。」
「味気ない?」
「はい。なんとなく、何を食べてもいつもより美味しくないし、あまり勉強にも集中できませんでした。あ、そうだ、リップ。有名ブランドの新色なんだって、クラスメイトの
「ん。
「本当に
「いいえ。まだまだ全員じゃないよ。特に目立つ人ばかり。もっとたくさんの人達を覚えたいな。」
「どうしてですか?」
「いつか、学園を卒業する日がくるでしょ。その日が来た時に後悔がないように、できるだけたくさんの人とお話しして、たくさんの事をして、たくさん思い出が欲しいの。」
気軽な疑問と思って聞いてみたが、
「そうですか。では、もっとたくさん、色々な事をしなくちゃですね。あ、それなら文化祭の方針も決めやすいかも。」
「え、何かあるの?文化祭の方針って?」
しまった。眠ってもらうつもりが、逆効果の話題だったか。
「明日の放課後にでもお話ししますので、今日はもう眠りましょう。本当に明日遅刻しちゃいます。」
もう一度、
「うん。
いつも、壊れ物を扱うように優しく触ってくれる。
「はい。じゃあ、もう寝ましょう。お休みなさい。
「うん。お休み、なさい。
どうやら限界だったようで、眠りながら私の名前を呼ぶ
そんな
「今日も一日お疲れ様でした。
小さな、誰にも聞こえない声でささやいた。
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