これは、あらすじである。
だが、単なる要約ではない。
あらすじだけで、ひとつの作品を成立させている。
いわば物語の歩き方だ。
本来、これは危うい手法でもある。
優れたガイドブックは、読者に読んだ気にさせてしまう。
遠い異国に行った気にさせ、実際の旅を不要にしてしまうからだ。
物語においてそれは、致命的になり得る。
だがこの作品は、その危うさの上に成立している。
読んでいないのに、読んだ気になる。
追体験していないのに、すでに関係者のような感覚を持たされる。
そして奇妙なことに、その擬似体験だけで満足してしまう。
それこそが、この作品の価値であり、同時に歪みでもある。