本作は、歴史に名を残した短命の天才画家ラファエロと、歴史建造物をつくる石工職人トゥーリオの物語です。
本作を語るうえで切り口はいくつもあると思いますが、これほど見る人によって受け止め方が自由な作品もそう多くないような気がします。
BLとしても読めるし、由緒あるルネサンス期の芸術に光を当てた新たな美術文芸としても読める。
性差や傾向を超えた、人とヒトの間で起こる、感情を持つ者同士の自然な営みが、この物語にはある印象を受けました。
孤高のラファエロと職人気質のトゥーリオ、ラファエロの工房、トゥーリオを育てる親方、ラファエロの恋人、当時のローマの人々の姿。
そして名高い芸術作品、観光地としても知られた神聖な教会、懸命に生きる当時の人々の息抜きとなるクリスマス。
ほとんどルネサンス芸術に無知の状態から本作を読み始め、自然とネットで作品を画像検索したくなり、読み終えたら少しだけ読み始めの頃とは変化している自分に気づく。
これこそ読書や物語の醍醐味だと個人的に考えます。
レビューと呼ぶにはいささか私感の強い感想となりますが、必ずやこの物語を通じて真の豊かさに触れることになるでしょう。
近況ノートにも、当時の雰囲気を感じ取れるものがございますので、目を通すことでさらに物語世界への理解が深まるかと思います。
遥か昔と思われている過去はそう遠いものでなく、今も呼吸をしながら心を魅了する作品群。
この素晴らしい物語も、ずっと胸に残り続けることになりそうです。