魔獣を食用肉として研究するメイスは、希少食材の調査のため、トレジャーハンターの男・セルベリを雇って森へ入る。
セルベリの相棒は、豚型の魔獣・マンタン。
本来であれば、食用として扱われる種の魔獣だ。
セルベリと過ごす日々を通して、メイスは、そして読者は、
生き物を「食用」と位置づけ、飼育し、流通させる人間の営みについて、改めて考えさせられる。
食用となる動物たちは、生まれる前から、より美味しい個体を生み出すために交配され、
生まれた瞬間から「食用」として育てられる。
与えられる餌さえも、“人間にとって美味しく、健康的に食べられる肉になるため”に選ばれている。
人間はそうして他の生き物を管理しながら、自分たちは食べられる側には立たない。
本作はファンタジーでありながら、その構造は現実世界と同じだ。
消費者は、自ら捕獲することも、命を奪う痛みや危険を引き受けることもなく、
食べたいときに食べられる形になった肉を口にする。
その歪さには気づける。けれど、では自分で獲るのか、自分で育てるのかと問われれば、私にはできない。
安全な場所で、食べたいときに、命をいただいている。
だからこそ、せめてその命に感謝して食べたい。
「人間だけだ、食うばっかりなのは」
セルベリのこの言葉が、心にズシリと響いた。
これは、ただのファンタジーではありません。
命を食べることの意味を問う、食の物語です。
ぜひご一読ください。