海王星の衛星トリトン。その氷の下に発見された、存在しないはずの人工遺跡を調査するべく設置された観測基地。十人の専門家たち、基地を管理するAI……そして、一匹の猫。存在自体が狂気の産物のごとき遺跡のもとで、一人、また一人、狂気にとらわれ、そして「人間」でなくなってゆき。気がついたときには、基地のすべてが……。異星の氷の下のピラミッドに、あなたは紛うかたなき『神』の存在を見ることでしょう。
本作からは〝恐怖〟、それも狂気を纏った悍ましい〝恐怖〟が滲み出ている。どうしようもない閉塞感、狂い出した歯車……そこに似つかわしくないのが三毛猫の〝みーちゃん〟だ。しかしながら、それすらも塗り替える絶望……ここにおける救いというのは文字通りの〝救済〟か。是非とも苦い味で顔を顰めて貰いたい。根底にあるのはクトゥルフ、しかもロバート・ブロックということ。恐ろしいものを読んだという強烈な一撃を喰らった後は眼に海王星の衛星が浮かぶ……。