迷いの中で、しかし天才軍師として生きざるを得ない主人公。
プロローグに続く本編第一話、「今日は一万人殺した」で始まる語りが、この作品の根底を見せつけてくる。
舞台は群雄割拠の戦国世界。「神の手」と呼ばれる軍師――と言えばスーパースターの大活躍……を、想像してしまうが、これは英雄譚では断じてない。
戦に勝つたびに何かを失い、流れる血の重みに押しつぶされていく一人の人間の、静かな崩壊の物語なのだ。
抑制された主人公の語り。その裂け目から滲み出る痛み。
彼の戦術は詰将棋のように冷徹だが、彼の人生そのものも、詰将棋のように淡々と、確実に、詰みへと向かっていく。
氷河のように冷静に、淡々と圧倒的な力で流れていく物語。
プロローグ+全九話、決して長くはないが読後感は重い。
今すぐ読破してほしい作品だ。