第16話 始めよう、装飾品作り

 そんなこんなで店番しながら魔法の練習をしている昼下がり。


「やっほー、りゅーちゃん。」

「やぁ、いらっしゃい、ベッティさん。」


 食材卸店マクベスのベッティが来店した。

 モスグリーンのロングヘアを今日はポニーテールにしている。

 頭の動きに合わせてフリフリ動く様が可愛らしい。



「今日は何かご入用で?」

「違うのー、今日はお休みなんだ。遊びに来たんだよー。」


 ニコニコと微笑みながらそう言った。


「このお店は、面白いものあるしね!」


 確かに。一般的な薬から、ポーション、魔道具、ちょっとした武具やキッチン用品、家具、家電、は、無いけど、同じような魔道具まで。実に様々なものを取り扱っている。

 ちょっと他のお店では見ないものがいっぱいだ。

 他のお店、ってか街中探しても無いかもなぁ。

 錬金術のお店としても特殊だから。うちは。


「好きなだけ、見てってよ。」

「ありがとー、ちなみに何か新作あるのかな?」

「新作?そこの箱とか。自信作らしいよ?」


 僕は店の片隅に置かれてる一抱えくらいある箱を指さす。


「これ?なんの箱?」

「エアコン、って分からないよねぇ。部屋を冷やす魔道具だよ。今の時期良いよね。」

「凍結の箱みたいな?」


 凍結の箱っていうのは、食品関係で出回ってる保管箱だ。

 箱の中身を冷凍してくれる物で、持ち運べるサイズから、大きな部屋くらいのものまで様々なものがある。

 うちにもある。いわゆる冷凍庫だね。


「凍結の箱ほど冷たくならないよ。過ごしやすい温度までで、ついでに湿度も調節するってさ。」

「ほえー、凄いんだねぇ。」

「あ、ただし。このランプが赤くなる前にここの魔石箱を交換しないと、、、」

「しないと?」

「爆発します。」

「へっ?」

「周囲の熱と水気を溜めてるらしくってさ。限度超えると溢れちゃうんだって。んで、熱と水で水蒸気爆発を、、、」

「え、、、えええええ、、、、」

「あ、けど一夏くらいは全然平気だって。省エネしてるからって。」

「シニエちゃんの作るのってアレだよね、、、」

「独創的だね。」

「独創的、と、言えなくもないのかも?」

「生活に快適さと緊張感を!」

「そんな緊張いらないかも、、あ、そだ。りゅーちゃんは?何か作ってないの?」

「ぼく?あるっちゃーあるけど。シニエほど派手じゃないよ?」


 そう。僕も自作したものをお店に並べてたりする。

 シニエ先生ほど大したものでは無いし、そもそも方向性が違ってて。

 あれ以来、服飾や装飾品の類を作ってたりする。


「ほえー!どれ?見せて見せて!」

「この辺のはぜんぶ僕製だよ。」


 店の一角に飾った僕の棚を紹介する。


「おー!綺麗!これりゅーちゃんが作ったの?!」


 リングやネックレスを眺めて目を輝かせるベッティ。


「そんなに強力な効果は付いてないよ?キラキラしてたり、気分が良くなったりって感じなんだ。」


 そう、僕が練習がてら作っている装飾品は特に便利な機能を付けている訳では無いのだ。

 周囲の魔力を吸って7色に光をチロチロ放つイヤリングとか、ちょっといい匂いのするリングとか、昼間光を溜めて夜ぼんやり光る石とか、おおよそ役に立ちそうもないものが多いのだ。


「そんなの良いよー!これとか、これとかキラキラで可愛いよ!」

「そ、そうかな?」

「うんうん!いいなー、キレイだなー」


 ベッティは淡く輝くリングを見て呟く。

 あ、そだ。


「はい、これ。ベッティさんに。」


 僕は店のカウンターに置いていた髪飾りを渡した。

 先日作った花をモチーフにしたやつだ。

 紫陽花に似た花で、こちらではレニーという名だ。

 レニー組のベッティにピッタリだろう。

 花の香りも特性付与して、薄ら青く輝く様は中々の次新作だ。


「ぅわぁ、、綺麗、、、いいの?」

「うんうん、いつぞやのお礼ね。貰ってくれると嬉しいな。」

「ありがとう、りゅーちゃん!」


 早速付けてくれるベッティ。

 モスグリーンの髪に青く光る紫陽花。いいんじゃないかな。


「どうかな?どうかな?」

「よく似合ってますよ。」

「ありがとー!」


 くるくる回るベッティ。


「いーなー、いーなー。ベッティだけズルい。」


 なにやら怨嗟の篭った目で僕を見つめている。


「私も色々がんばったのになぁ。カチコミだってかけたのに、、、、」


 なにやらイジイジと呟いてる。


「り、りゅーちゃん、シニエちゃんがヤバイよ?」

「ううう、、ほんとだ、なんかもうカビ生えそうなほどウジウジジメジメしてる、、、」


「一緒に暮らしてるのに、、、くそぅ、やはりあの胸かっ!ふるんふるんのあれがいいのかっ、、」


「ひっ、、なんか視線が刺さるんですけどっ。」

「うをっ、なんか怨嗟に魔力が混ざってるっ」

「ええ?!それって大丈夫なの?!」

「明確な意思じゃないから、、たぶん?」

「たぶん?!」

「いやぁ、シニエってなんかハンパないから、、、」

「なんとかして!りゅーちゃん!はやく!」

「お、おう、、、」


 恐る恐る、僕はシニエに話しかけた。


「あ、あのー、シニエさん?」

「・・・・」


 じと目で無言でいる。


「シニエにも感謝してるよ?」

「・・・ふぅん?で?」

「で?!も、もちろん、シニエにも何か贈ろうと!」

「ほほう?」


 タジタジの僕を見て二ッと笑うシニエ。


「楽しみにしてるね?」


 くっ、、、


「はい、、、」


 仕方なし。元々シニエにも作るつもりだったし。ホントだよ?あとレイチェルにも。

 けどなぁ、中途半端な物は贈りたくないんだよ。

 同じ錬金術師だしさぁ。

 腕とかスキルとかは置いといて、せめてあっと言わせたい。

 そのアイデアがなかなか出ないんだよなぁ

 レイチェルは組の花モチーフで良いかなぁ。栗毛だから白いたんぽぽにしようかな。

 シニエのは、うーん、難しい。この前の時は雷属性ばっかりだったけど、どうもそれだけじゃないみたいだし。そもそも本人は錬金術師って言ってるし。

 うむむ、ぐるぐる考えても拉致があかんし。

 こんな時はアイデア探しかな?


「ベッティさん!」

「ん?なぁに?りゅーちゃん」

「この後時間あるなら一緒に市場行きませんか?」

「私は良いけどぉ、お店はいいの?」


 振り返ってシニエを見る。


「いいよー、いってらっさい。」

「ありがとう、シニエ!」

「おみやげよろしくぅ。」


 オーナーの許可も出たし、僕はベッティと共に市場に繰り出すのだった。

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