第4話 浅井長政と羽柴秀吉との邂逅 江北

豊臣秀吉は若い頃、木下藤吉郎と名乗っていました。その彼の夢は一国一城の主になることでした。




織田信長に仕えた藤吉郎は、信長のもと、織田家に敵対した浅井家を滅ぼしました。信長は浅井長政の遺領、浅井長政の居城・小谷城を藤吉郎に与えてくれました。藤吉郎は夢を叶えたのです。その頃から彼は羽柴秀吉と名乗るようになりました。織田家の柴田勝家と丹羽長秀から名前をいただいたのです。




ですが、江北の民はなかなか羽柴秀吉に懐きません。滅ぼした浅井長政は、なかなかに善政をしいていたらしいのです。領民たちは浅井長政をを慕っていました。彼は領地経営に苦労していました。




ある夜のことです。羽柴秀吉は子供の笑い声で目が覚めました。な、なんだ、この城に子供などいないはずなのに。羽柴秀吉は部屋の外に出ました。浅井家の若君や姫君たちが集まって笑い合っています。子どもたちの姿が消えると次に現れたのは、浅井長政でした。さては恨んで迷ってでたか。羽柴秀吉は刀に手をかけました。しかし、浅井長政は微笑んでいます。


「お茶でもいかがですか」


浅井長政の横には茶釜があり、茶の湧く音がしています。浅井長政は茶釜から茶をすくうと羽柴秀吉に差し出しました。


羽柴秀吉は恐る恐るうけとりました。


「恨んで、迷って、でてきたのではないのですか」


「まさか」


浅井長政は首をふりました。


「あなたに頼みがあってでてきたのです」


「頼み?」


「これを」


浅井長政が取り出したのは一枚の地図でした。


「この城は山城。不便でしょう。この地に新しい城を建ててもらいたい」


秀吉は地図を見ました。なるほど、ここなら、都にも近く交通の便もよい。羽柴秀吉は思いました。


「この城を破却して、ここに城下町を経営すれば、他国から人が寄ってきて、金を落として行ってくれます。また、商業が盛んになれば、農民たちからの年貢米に頼らずとも領地経営は行なえます。この地に移ってくれば税をしばらく免除するといえば人は集まりましょう」


「そのため、いささか、準備もしていました。竹生島に建築材を預けてあります。それを受け取ってください。湖の水運を利用したどこにも負けない都を造ること。それが私の夢でした。どうか、あなたに私の夢を叶えてほしい」


羽柴秀吉はだまって聞いていましたが、疑問を浅井長政にぶつけました。


「それなら、なぜ、我が主君に敵対したのです。我が主君はあなたを認めていた。信頼していたといってもよい」


浅井長政は、また、微笑みました。


「あなたの主君は素晴らしい方だ。敬愛していました」


「では、なぜ・・・」


「血がたぎったのですよ。戦ってみたかった。倒したいと思った。いってみれば私のわがままです。そのために妻子、家臣、領民を巻き込んでしまった。なかでも領民にはすまない。もともと、この地は緑豊かな美しい土地でした。ですが、長年の戦さのため、疲弊してしまった。どうか、この地をよみがえらしてください」


浅井長政の姿は消えました。




夢を見ていたのだろうか。気がつけば羽柴秀吉は寝所にいました。


夢ではない証拠に浅井長政が指し示した地図が手に握られています。


羽柴秀吉は、今浜の地に城を建て、その地を長浜と改めました。浅井長政の助言通りに城下町経営をすすめていき、長浜の地は大変栄えました。


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