学校という舞台を離れ、三竹が老婦人・小林千代と出会う日常的な場面に絞った構成が、本編とは違う魅力を持っています。レビューでも「学校外の日常の描写に終始する内容が主人公の人間性を深くする」と評されている通り、ミステリー要素を抑えた分、三竹個人のキャラクターをじっくり掘り下げる前日譚として優秀だと思いました。
女傑然とした小林千代という人物への興味から始まる三竹の視点は、本編で示唆されていた「天涯孤独で何か訳がありそう」という背景にも繋がりそうな手がかりを感じさせ、シリーズファンには見逃せない一篇になっています。
事件が起きない静かな一話だからこそ、三竹和沙という主人公の素顔がより鮮明に浮かび上がる、長編シリーズの番外編として丁寧に作られた一作だと思います。