第12話 1998年にM1 Macを出してみる:Appleと創るモバイルPCの未来

2026年現在、世界のノートPC市場で圧倒的な存在感を放っているのが、Appleの「MacBook」シリーズです。

その心臓部である「Mシリーズ」チップ(Apple Silicon)は、スマートフォン向けに培われたARMアーキテクチャを採用し、驚異的な処理能力と、ファンレスでも発熱しない省電力性を両立させました。


「ARMベースのチップで、高性能なパソコンを作る」


この2020年代における一つの究極の正解を、本作『バブルフィーバーJ』の世界線では、史実より20年以上早い「1998年」に実現させてしまいます。

ターゲットは「世界中のクリエイターやビジネスマンに、薄くて軽くて、1日中バッテリーが持つ最高のモバイルPCを最速で届けること」です。


史実において、ARMベースのPCが実用化されるまでに2020年までかかったのには、3つの高い壁がありました。


1. 半導体製造プロセスの限界

M1チップの「5nm」という極小プロセスがもたらす電力効率。

2. ソフトウェアの壁

既存のPC用ソフト(x86向け)がARM上では動かないという互換性の問題。

3. アーキテクチャの壁

初期のARMが「低消費電力な組み込み用(32bit)」に特化しすぎており、PC向けのパワフルな処理(64bitやアウト・オブ・オーダー実行)を想定していなかったこと。


創一郎は、圧倒的な資金力と未来知識を用いて、これらすべての壁を1980年代後半から計画的に取り払っていきます。


製造プロセスの爆速化(ASMLとTSMCの垂直支援)


史実では資金難や経営判断の迷いで足踏みしていたASML(製造装置)とTSMC(受託製造)に対し、創一郎は無限の資本を投下します。これにより、光の波長の限界を次々と突破。

1998年の時点で、史実を大きく前倒しした「0.18μm(180nm)」プロセスを安定稼働させます。5nmには及びませんが、この世代になれば、CPU、GPU、そして第2部で培った「ICKI」由来の高性能メモリコントローラを一つのチップに統合する「SoC」が物理的に可能となります。


ソフトウェアの壁を「NeXT」で透過する。


AppleがM1移行を成功させた最大の功労者は、古いソフトを自動翻訳して動かす「Rosetta 2」でした。

創一郎は、スティーブ・ジョブズが立ち上げたNeXT社を初期段階から支援・統合することで、この魔法を1990年代に持ち込みます。NeXTStep OSが持っていた「Fat Binary(一つのソフトの中に複数種類のCPU用コードを同居させる技術)」を基盤OSに組み込むことで、ユーザーは「中身がインテルかARMか」を一切気にすることなく、お気に入りのソフトをそのまま使える環境を手に入れます。


Appleとの共創:1998年の「MacBook Air」


そして迎える1998年。

洗練されたNeXTのOS技術と、日本の半導体技術(TSMC製・新谷開発設計のARM SoC)を融合させた最高のショーケースとして、Appleから革新的なノートPCが発表されます。


それは、当時の分厚くて熱を持っていたノートPCの常識を覆すものでした。

極限まで薄く、冷却ファンを持たず、しかしハイエンド機並みの速度でグラフィックや文書処理をこなし、バッテリーは1日中持続する。まさに「2020年代のMacBook」の体験そのものです。


創一郎の介入によって前倒しされたこの「M1モーメント」は、決して競合を排除するためのものではありません。

「優れたアイデアを持つ人間が、場所を選ばず、いつでもどこでも最高の道具を使って創造性を発揮できる世界」を、四半世紀早く人類にプレゼントするための、壮大なテクノロジーの贈り物なのです。

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