進歩しすぎたがゆえにかつての熱狂を失ってしまったモータースポーツ。
その改革のために、観客の「受け」をマシンのエネルギーとするギミックが取り入れられる…。
このあたり、実は私も思い付いた設定ですが、おそらく作者様は、実はモータースポーツにそれほどお詳しくはないのではないかと、個人的に推察します。
詳しくないがゆえに、定跡に囚われないエネルギッシュなレース・シーンの描写が実現しています。そう、レースに目の肥えた「玄人」ではなく、「浅いファン」として、作中の観客達と同じ立場でこのAGPに熱狂することができるのです。
そして物語は第二章から、がらりと舞台を変えた第三章へと読み進むにつれて、次第にもうひとつのテーマを読者に提示していきます。
進歩しすぎたAIに対する人間の対立、排斥。
それに対するAIの「合法的な反抗」。
やがて−この先は読んでのお楽しみとしましょう。
「人間とAIの関係はどうあるべきなのか?」
今後現実世界でこの問題は避けては通れないでしょうし、それをテーマにした創作物も増えて行くでしょう。
モータースポーツというフックからこのテーマを生き生きと描く作者様には、かなりの力量を感じます。
レースものが好きな方もそうでない方も、ぜひご一読していただきたい力作です。