第33話 これこそが主人公(?)
近くにいた人間を殺した後、主人公君達の仲間の死体があるであろう場所に向かっていた。森を進むにつれ人と出会うことが増え、そのたびに得た能力を試して殺していた。
(結構増えてきたな)
その数百は超える、このバトロワにはおよそ400人が参加している(アーマト情報)ため、25%といった所。
能力を整理しつつ向かっていくと、時刻は夕方に差し掛かっていた。川を見つけた俺たちはそこで夕飯を取ることにした。
なにか作ろうとしたが、東雲に嫌がられてしまう。
「待ってください、自分たちを殺すと言ってきた人のご飯を食べたいと私たちが思っているとでも?自分たちの分は自分たちで作るのであなたはあっちで食べてください」
これは返す言葉が見つからないほどの正論だったので大人しく森で一人飯を楽しんでいた。皿に盛り付け耳で人を探しながら黙々と食べている。
俺が手にしている皿は水谷がこっそりくれた物だ。東雲と違って俺を利用するために気持ちを落ち着かせているようだった。
最初は水谷が感情的な人間なのかと思っていたが、そこは主人公君と似ている。
夕食を食べ終えた俺は、耳で捉えた音を頼りに周辺の人間を殺していった。気づけば夜になっていて拠点に戻っている。
(随分と軽くなったな……)
花音を殺したときは命を奪ったことによる罪悪感が募ったが、それ以降は淡々と殺せるようになってきた。
人を殺すことを目的にはしている俺にはありがたい慣れだが……それは人間やめてないか?
「ね、ねみぃ……」
ようやく拠点に戻れた俺はその場で倒れこみ、気絶するように眠った。
「…………あ?」
―――おかしい。眠りについたはずなのに、背中の土の感触も、森のざわめきも消えている。
そこに広がっていたのは、上下左右の感覚すら狂いそうなほど真っ白な世界だった。
「……ここ、は?」
ふと隣に気配を感じて顔を向けると、そこには見覚えのある紫髪の少年が座り込んでいた。
真っ白な世界に溶け込みそうなほど透き通った白い肌に、血よりもどす黒い赤を宿した双眸。彼が座る地面には影ひとつ落ちておらず、まるでその場所だけ空間が切り取られたような違和感が、彼が人ではないことを無言で告げていた。
「厳密には違うが、わかりやすく言うと夢の中だ」
どこか遠くを見つめるように視線を動かさずアーマトが話し始めた。
「ここに呼んだのはお前か?」
「あぁ……少し聞きたいことがあってな」
ようやく視線をこちらに向けてきた。血よりもどす黒さを宿した赤い眼が、俺を見据える。
「貴様、最近人を殺すことに躊躇が無くなっているな。何故だ?なぜ貴様は人を殺せるんだ?」
「……知らねぇよ、別にいいだろ」
何故殺せるようになったか、そんなこと俺にも分からない。自分が化け物になっている証拠ぐらいにしか考えていなかった。
「そうか、知らないならいい」
アーマトはそっぽを向きまたどこかを見つめる。いや俺どうしたらいいんだよ。ここで朝を待てってか?
「せっかくだ、さっき殺した奴の能力でも試せばいい。精神的な疲れは取れんがその分強くなれるぞ」
「……そうだな、そうする」
そんなこといつでも出来るが、今の俺には必要なことだ。疲れ切った体を気合で動かしいくつかの能力を試し始める。
どれくらい試しただろうか、数時間経っても試しているとアーマトから声をかけられた。
「そろそろ朝になる、現実世界に戻すぞ」
いつの間にか俺の後ろに移動していたアーマトが俺の背中に触れた瞬間、意識が落ちた。
意識が戻り目を開けようとしたが、日差しによって開けれない。昨日あった身体的な疲れが未だに取れておらず、体がだるい。
あいつらが来るまで寝ようと思いそのまま二度寝をしようとした矢先、事件は起きた。
「きゃああああああ!!」
いきなり女性の悲鳴が聞こえ、ばっと体を起こす。
(この声……まさかっ!)
聞こえた声の主は、おそらく東雲だろう。聞こえてきた方向としても間違ってはいない。
全速力で川へと向かう。川に着き辺りを見渡すと、信じられないものが映っていた。
「御門!あんたいい加減にしなさいよ!これで何回目!」
「……4回目です」
目の前の光景はなかなか壮絶なものだった。びしょ濡れの髪を振り乱し、布一枚で体を隠して頬を赤らめている東雲。同じく布一枚で、怒りのあまりその布がずり落ちそうなのも構わず御門に激怒している水谷。冷たい石の上で正座させられている主人公君。おまけに頭にはデカいたんこぶ付き。
「どうして水浴びのタイミングでこっち来ちゃうのよ!わざとでしょ!本当はわざと来てるんでしょ!」
「ちっ違う!本当にたまたまだ!」
最近は百合しか味わっていない為、これはこれで見ごたえのある場面である。にしても四回たまたま水浴びを目撃するとは、これこそが主人公(?)
水谷の説教は続き、俺たちは昼頃になってようやく目的地へと歩みを進めるのであった。
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