第23話 天野花音 その1




 少し、いや結構自語りというか……昔話というか……とりあえず聞いて欲しい。


 私──天野花音は、自分で言ってしまうが完璧美少女である。頭もいい、性格もいい、何より可愛い!


 誰にでも優しくしていたからか、小学6年間でクラスの中心人物じゃなかった時なんてない、そう言い切れるほどだった。


 それはもう目立ちまくっていた物だ。おまけに私自身目立ちたがり屋なため、人生順風満帆であった。


 男の子からも女の子からも告白をされてたし、私を嫌う人なんて嫉妬深い人くらいだろうと思っていた───


────あの子と出会うまでは



────天野花音視点(小学三年生)────



 「花音ちゃん!昼休み何する?」


 「花音!こいつらとじゃなくて俺と遊ぼうぜ!」


 「ちょっと!花音ちゃんは私たちと遊ぶの!」


 「はぁ!?うるせぇぞ!」


 「「ん〜〜〜〜〜〜!!!!」」


 (…………うるさいなぁ)


 私が大人気なのはいいけど、こうもうるさいと少し腹が立ってしまう。しかしここで文句を言うのは完璧美少女である私の行動として間違っている。


 「まあまあ……落ち着いてよ……じゃあこうしようよ!日付が偶数の日は女の子と、奇数の日は男の子と遊ぶ!これなら平等でしょ?」


 私の完璧な案に、一同が歓声をあげた。


 「さっすがー!凄いよ花音ちゃん!じゃあ今日は私たちだね!」


 馴れ馴れしく私に抱きついてくる。この子は可愛げはあるが色々と面倒くさい……


 「ちぇ!じゃあ明日遊ぶぞ!花音!」


 「うん!もちろんだよ!」


 本当はこんな坊主となんか遊びたくなんかない。しかし遊ばないなんてことは私が完璧美少女で無くなってしまう。


 この時の私は、相当な捻くれ者だったと記憶している。自分より程度が低い人、優しくない人、頭が良くない人を見下していたと思う。今になって思うと相当なマセガキだ。


 「それじゃあブランコで遊ぼ!ほらほら!」


 ブランコに案内しようと私の手を引っ張ってくる。ブランコは逃げないのだから急がないで欲しい。


 溜息を飲み込みながら廊下へ出ようとしたその時──ドスッ、と肩に衝撃が走った。ぶつかった少女は尻もちを着いてしまった。


 「あっ!?ごめん!大丈夫?」


 しゃがんで顔を確認しようとしても、長すぎる水色の前髪のせいで顔がよく見えない。


 「……うん、大丈夫」


 俯いたまま腰を上げ、静かに自分の席へと戻っていった。


 「花音ちゃん!行くよ!」


 「うっうん!今行く!」


 …………誰だったんだろうか



────放課後────



 最後のSHRが終わり、下校の時間となった。帰る準備をしていると、クラスメイトたちが話しかけてきた。


 「花音ちゃん!一緒に帰ろー!」


 「ごめん!今日別の人と帰る約束してるから……じゃあね!」


 足早に教室を立ち去り、私よりも早く帰ろうとしていた子に追いついた。


 「そこの君!教室でぶつかった子だよね?」


 「……そうだけど、何」


 この時の印象としては暗い、とにかく暗いといった感じだ。私の周りにいるような人は陽気な人ばかりで、逆に興味を引かれた。


 「一緒に帰ろうよ!」


 「嫌かな」


 「いえいえそれほどで───なんて?」


 「だから、あなたと帰るのは嫌……じゃあね」


 歩くスピードを早め、私を置いていこうとする。


 最初自分の提案を断られると思っておらず、数秒フリーズしていた。それがまたしても興味をそそられた。


 歩くスピードを早めた少女に全力疾走で追いつき、話しかける。


 「あなた名前は?好きな食べ物は?趣味は?私お寿司好きなの!知ってた?醤油をつけるのはネタの方がいいの!あとあと───」


 「わかった!ごめん!一緒に帰るから!」


 ようやく諦めてくれて歩くスピードが普通になった。少女が少し息が荒くなっていることに気づいた。歩くスピードを早めただけで息が切れるなんて……なかなかの箱入り娘、あるいは運動不足の極みと見た。


 「よろしい!それで、お名前は?」


 「……橘琴佳」


 絞り出すような、けれど鈴の音のように綺麗な声だった。


 「橘さん!よろしくね!」


 ───これが、彼女との出会いだった。


 



 


 

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