第14話 支え合ってる




――――襲撃者A視点―――――



 攻撃開始から数分、あいつのドームは未だ壊れる気配はない。


 「……さすがに出るか、二人とも出ないように」


 「「はーい」」


 変わらない現状に痺れを切らしたのは一之瀬の方だった。二人を残しドームから姿を現した。



 「馬鹿がっ!」


 そのドームさえなければこっちが勝つ!


 「プランR開始!」


 「「「はい!」」」


 『速度上昇』×『分身』×『筋力上昇』


 分身のステータスを上げた物量のごり押しなら、今度こそいける――!





 「邪魔だ――――星の爆発スターダスト・ノヴァ


 言葉が紡がれた刹那───世界が反転した。彼を中心に狂ったような密度のアニマが膨れ上がり、猛烈な圧力となって四方八方へ爆散する。迫りくる分身たちは、紙屑のようにいとも容易く掻き消された。


 轟音、衝撃波、そしてすべてを飲み込む光。


 この現場にいた橘はこう語る。


―――星そのものが爆発したような、圧倒的質量のごり押しって感じかな。え?耐えられるか?……無理に決まってるじゃん、あんなの耐えれそうなの雷門ぐらい。




―――――一之瀬大和視点―――――



 「だぁーーー!疲れたー」


 アニマが底を尽きてその場に倒れこむ。星雲の殻ネビュラ・シェルといい星の爆発スターダスト・ノヴァといい消費が激しい技を使いすぎた。いつになったら俺自分の底がわかるんだ……


 「いっちー!大丈夫ー?」


 遠くから天野の声が聞こえる。ちゃんと出ない約束を守っていてくれているようで安心した。


 「大丈夫だ!もう帰ろう!……ふんしょ!」


 気合で立ち上がり、帰路に立つ。


 もうこんなことないでくれ、頼むから。

 

 


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 「はぁぁーー!?!?アニマが枯渇した!?」

  

 帰ってきた俺たちは、ありのまますべて話した。もちろんガス欠したことも伝えたら案の定赤羽がブチ切れて説教中だ。


 「いやーすまん!マジで悪気無――」


 「悪気なかったらなにしてもいいわけ?」


 「すみませんでした!」


 こいつほんと口げんか強いな!?何も言い返せないでいると、俺を助けようとする天使が舞い降りた。


 「あ、あの!いっちーは私たちのために―――」


 「花音ちゃん、ちょっと静かに」


 「あちゃ」


 赤羽の後ろにいる天野からジェスチャーを送ってくる。


 『だめでした☆』


 このぽんこつ天使!!でもかわいい!!


 しかしこっちにはダークホースがいる!抜かりはない!


 「ねえ」


 「琴佳?悪いけど今―――」


 琴佳を追い払おうとした瞬間―――爆弾発言がまるでいつも言ってますよ感満載で投下される。


 「優お姉ちゃん……あそぼ?」

 

 「そうね、私お姉ちゃんよね。なにして遊ぶ?」


 


 勝った!こいつが馬鹿でよかった!


 「────あぁ一之瀬、話の続きはまた今夜」


 ……………勝負はいつだって、戦う前から決着がついているもの……か……





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 赤羽の説教が終わり、就寝時間となる。今は俺が見張りで暇なのでアニマが使えないか確認してみる。


 「……やっぱ使えねぇや」


 アニマを使い切ってから数時間経ったが、予想通り使えなかった。こうなるとまる2日はアニマは使えない……


 「どうすっかね〜」


 現実から逃避するために星を眺める。軽く言ってるがかなりまずい……天野の地雷があるから襲撃は心配ないが、今の俺は足手まといだ。頭を悩ませていると、後ろから声をかけられた。振り返ると、申し訳なさそうな顔をした天野だった。


 「いっちーさ……大丈夫?」


 「天野か……大丈夫、まだ起きて────」


 「そうじゃなくて!アニマのこと」


 「そっちか、少しずつ回復してる」


 嘘だ、全く回復なんかしていない。だがここで正直に答えると天野は自分のせいとか考えそうだし。


 「嘘……朝と違ってアニマが感じれないよ」


 どうやらそんな俺の思惑は全て見抜かれていたようだ。


 「え……わかるのか」


 俺のウソがばれたのは、天野が相手のアニマの量を見る『灯』を使ったからだろう。相手のアニマがどれほど強く光っているかを視る技術。


 体内でできる技術だから練習したら誰だって出来る技術だが、目というデリケートな所にアニマを集中させるのはかなり高度な技術なため、まさか天野が使えるとは思えなかった。


 「いっちーのアニマ技術聞いてからさ……色々練習してるんだ、私も少しは役に立ちたいし」


 「充分役に立ってるから安心────」


 「じゃあ!」


 フォローを入れようとしたら、間髪入れずに彼女から鋭い一声が投げつけられた。


 「じゃあなんで……私あの時何も出来なかったの?弱いからじゃないの……?」 


 悔しそうな表情に涙を浮かべ、今にでも目から零れそうだった。


 「ねぇ……私、ここに必要かな……?いっちーの足手まといじゃないかな……?」



 自嘲するように天野が愚痴をこぼす。


 足手まといなんかじゃない、天野は必要だ。そんな言葉は天野にとって気休めにもならない。なんて声をかければ─────



 「確かに一之瀬と比べたら弱い。それは事実よ」


 「──ちょ!?」


 「あんたは黙ってなさい……後は任して」


 影から音もなく現れた赤羽は天野の隣にどっかと腰を下ろした。夜風に吹かれる彼女の横顔は、先ほどまでの説教モードとは打って変わって、どこか穏やかだ。彼女は怯える天野の瞳を真っ直ぐに見据えたまま、容赦のない言葉を続けた。


 「花音ちゃんの索敵は確かに優秀だけど、私達は一之瀬みたいに地面に設置されてる地雷の場所なんて分からない。下手したら私踏んじゃいそうだし、それだったら一之瀬の『雫』の方が安全」


 「そう……ですよねっ!じゃあ私……ほんとにいらない子だっ────」


 「でもね、強い私達にも弱点はあるの」


 「え……?」


 「雷門の軽減は自分にしか使えないし、私の強制は仲間を巻き込んじゃうし、一之瀬は自分のアニマすぐ使い果たすし、琴佳もカウンターみたいなことはできるようになったみたいだけど、近接になったら勝ってこないわよ」


 「でも私たちは負けない、なんでか分かる?」


 天野はしばらく考えたようだが、分からないといった様子だった。それを察したか話が進む。


 「それはね……私達が『支え合ってる』からよ」


 「支え……合ってる」


 「そうよ、近接は雷門、遠距離は一之瀬、多対一は私、琴佳は頭がいいから相手の情報を私達に共有して戦いやすくしてくれる。そういった感じで支え合ってるの」


 「だからね─────」


 天野を抱きしめ、安心させるよう優しく語る。


 「花音ちゃんも私たちを支えてほしい、その代わり私達も花音ちゃんを支える……それでいいじゃない」


 赤羽の励ましを聞きしばらくしてから、天野の中の限界が来たのだろう。天野は赤羽の胸に顔を埋め、幼子のように声を上げて泣き出した。


 大粒の涙が、赤羽の服をみるみるうちに濡らしていく。それは、自分の無力さに絶望していた悔しさ。それ以上に、こんな自分でも「必要だ」と言ってもらえたことへの、震えるような安堵。


​ 言葉にならない嗚咽が、静まり返った夜の森に溶けていく。彼女の細い肩が、しゃくり上げるたびに激しく揺れていた。



 (ありがとう……赤羽)


 それを言っても「あんたのためじゃない」とか言われるとわかっているので、心に留めておく。





 


 


 

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