作者ご自身が紹介されているように、和の御伽噺で語る家族の物語です。主人公の美晴の家族はとにかく家族愛に溢れています。評者のような捻くれ者には眩しすぎるくらい。家族愛を存分に感じられることがおすすめポイントの1つめ。次に構造が巧みです。美晴の母親は幼少期に神隠しに遭い、18歳のときに身籠って帰ってきました。普通に考えて犯罪に巻き込まれたか、悪い男に騙されたか。作中ではもう少し御伽噺的に「鬼の取り替え子だ」と噂されています。ところが真相はといえば……。多くは語りませんが全て美しく反転します。この物語の構造設計は見事そのもので、おすすめポイントの二つ目です。安心して読める、という形容がぴったりのお話でした。
主人公の美晴ちゃんが、学校から出された宿題をきっかけに、日常の一歩外にある冒険に踏み出すお話です。
そこにはお母さんがずっと抱えてきた秘密、そして自分自身の大きな秘密が待っていて…。
少女の成長譚だけでなく、そこに住む人々が古くから抱えてきたとある傷も、物語に深みを与えています。
美晴ちゃんの存在が、いずれその傷を癒し塞いでくれるのではないか…そんな希望を感じさせるラスト。
落ち着いた語りの中に、作者様の祈りが込められた素敵な物語です。
終盤のお祭りのシーンは、読んでいてワクワクする彩りに溢れ、読者を一緒にすぐ隣の見えない世界へと誘ってくれます。
ぜひご一読ください。