羊水の夢

多々野カカシ

羊水の夢

『ねんねん、ころりーよ

おこーろーりよー。』

赤子を抱えた、女性が立っていた。



あー、私は画家だ。

名も無き画家だそれ以外の自己紹介は、いらないだろう。


 どうせ俺は、無数にいる人間の1人なのだから

どうしても、名前で呼びたいなら教えてやる。

私は慈悲深く優しいからな


名前は、和樹と言う。

さぁー、呼びたまえきっとこの名を口にすれば感動と共に涙を流すだろう。


血が循環している己の器を持ち上げ

1歩、また1歩と右左を使って前に進もう。


なんて神秘的行為だろう、霊長類の中でも私達しか出来ない歩き方。

やはり、我々は食物連鎖の頂点に君臨しているものだけが許されるものだろう。


(今日は、青空だな…)

青の顔料なんて昔では、高価で権力の象徴として使われていたぐらいだ。

なら、この空は高価ということだろう。

さぁ、決まった服と決まった靴を履く。


手首に着いているブレスレットは気に入らないが、とってもとっても翌朝には付いていから

呪いのアイテムなんだ。


あー、俺が素敵なばかりに物まで引き付けてしまうとは。

そんなことはしてられない、今日は恋人とデートなのだ。機嫌を損ねてしまう。

考えに更けていると…


「おはよう、準備出来た?」

彼女の柔らかい声が聴こえた。


 「あぁ、おはよう、準備は出来たよ。今日も変わらず可愛いね。」


「そうでしょう、ありがとう 笑」

目尻を下げて優しく微笑む。


(あぁー、好きだな‥)と思考の海に浸っていると


「今日も、あのカフェに行きましょう。そうしたら、きっといい日になるわ。」


「いいね、久しぶりにコーヒーを飲みたい気分だ。」


彼女は、できた人だ。

私がしたいことやりたいことを言い当ててくれる。


そうと決まれば行こう。扉に手をかけ出た。

外はやはり綺麗だ…写真に収めたいぐらい


「今日も晴れね」


「そうだなぁ、晴れることはいい事だ」


「そうね、青は高貴な色だものね 笑」


「そうだよ、とっても高貴な色なんだ。

だから私たちは高貴なる一族なんだ。」


ふふっ 彼女は、笑っていた。

私の目の前で確かに彼女は笑っている。


「貴方の両手首は、赤い薔薇で染っているのに?」


「あぁー、そうだよだから青くなるように毎日

毎日特別な飴を舐めるんだ

そうすれば、きっと青になる!!

この私がいってるのだから。」



そう言いながら、歩いていく。

すると向こう側からこちら目掛けて歩いて来る


あぁー、今日も付いていない…

いつもうるさい男だ。


「貴方は何故生きているんです?

惨めだと思いませんか、そこに誰がいるんです?」


やはりこの世は無常だ。このような輩は一定数いるものだ。


「穀潰しの碌でなしだと、そう思いませんか?

貴方はいつもどうして、そうなの‼︎」


だから、関わらず逃げるのが吉だ

(あー、うるさい うるさい)

暇なのか何なのか、説教される筋合いは無いと言うのに。

嫌いだ。


「ははは、楽しいわね。」

彼女は愉快に笑った。それが楽しくて


「はぁ、はぁ、はぁ、‥

君が笑うから、私も笑ってしまったじゃないか」


肺が膨張したり収縮する感じがする。

気管支を暖かい息が行ったり来たり

苦しい‥


  「ここまで来れば来ないだろう…」


「彼も毎日律儀よね、ここまで来ると優しい人ね。」


彼女は息も乱れず言った。


「毎回話しかけられ、文句を垂れているに?

  いい人なわけないだろう

  君さえいればそれでいい…」


 「そうね…でも夢は長くは続かないわ」


そぉ言って彼女は笑い、先に行った。



向かってる喫茶店の店主は、とても優しい

いつも、俺の身を心配してくれる。

店主のような人のことを聖人と言うのだろう


そう考えていると、店の前まで着いた。


家を出て1分にも満たないこの場所は、私の心の癒しの場所だ。


スライドして扉を開ける

自然と小鳥の音楽が流れていてとても落ち着く


「こんにちは、和樹さん」


「こんにちは、マスター」


先に行っていた、彼女はマスターの目の前に

立っていた。


「今日の気分はいかがですか?」


「今日は、とても良い日です。

彼女に起こしてもらえて、自分は

めぐまれてますよ。ねぇ?」


彼女に問いかけた


「そうね、今日もかわらずですよ先生

でも、彼が居ないと寂しいわぁ」


「変わりないようですね。」


マスターは何か書きながら、相槌をしながら話を進めていく。


「それでは、これとこれをどうぞ。

少し落ち着くでしょう。」


「ありがとうございます!!走ってきたのでとても美味しそうですね。」


マスターの格別な1杯を体に入れていく。

やはりこの一口に限る。

やはり疲れていたのか


(何だか、眠くなってきた。)


眠気に抗えず目を閉じる


あぁー、できることなら赤子になりたい…

彼女の子宮のなかで、羊水に満たされ

胎盤の上で羊が踊るように 歌うように寝ていたいのです。

それが私の夢なのです。




だからどうか邪魔をしないでください。




『今回も容態に変化なしか』

男の言葉に返すものはいなかった

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羊水の夢 多々野カカシ @Sol-1102

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