読み始めて、設定に置いていかれないかと心配になったものの、そんなことはなく、世界観を楽しめた。
読了後、情景描写がほとんどないことに気づく。気づくのが遅くなったのは、情景描写が無くても、陰鬱な世界観の雰囲気が出ていたから。これは稀有だと思う。
ストーリーはしっかり重く、ダークを体現している。
ただ、読み手が感じる前に、地の文が主人公の感情を先回りして語っているとも思った。
好みですが、せっかくの三人称なので、主人公の内面独白ばかりでは無く、主人公の感情を所作の描写とかでもらえると、読み手としての楽しみが増えた気がします。
映像をイメージしやすい作品なのに対して、地の文が映像を捨てて感情説明に寄っているので、もう何割か映像のための情景描写を、要所要所にもらえたら、さらに濃く作中の世界観を楽しめたと思ってます。
作品、ありがとうございました。
寿命が通貨として流通し、呼吸や食事にさえ命の残高を削られる世界。その設定の強さだけでも一気に引き込まれますが、本作の魅力はそこに留まりません。妹ヒナを救いたいカイトの切実さ、理不尽な階級社会への怒り、そして力を得た後も完全な復讐者になりきれない人間臭さが胸に残ります。特に、救えなかった過去を抱えたまま、目の前の命に手を伸ばす場面が熱いです。
リナやメフィストの思惑も不穏で、味方なのか利用者なのか読者を迷わせる配置が上手い。先へ進むほど世界の闇と、カイト自身の危うさが深くなりそうな期待感があります。命の価値を数字で突きつける、重厚なダークSFファンタジーです。