01_012
「師匠、ついてきてたの!?」
ボクは驚愕の声を上げた。
「え? ……師匠、ちっちゃくない!?」
師匠のパンチによって目は『3』になってるが、一応見えてる。
バッグから飛び出した師匠は、手のひらに乗るサイズに縮んでいた。
「そ、そういうこともあるでシュ……」
いや、ないよ!
……ないよね?!
「妖精の血を引いてるのか?」
後ろから、シノの声が聞こえる。
「おまえは服着るでシュ!」
ああ、情操教育が……
「妖精の血って……」
ボクの言葉に、ミルカ師匠は目を逸らした。
「……ホントは、あんまり見せたくないでシュけど……」
ミルカ師匠は小さな手を突き出して、ステータスオープンとつぶやいた。
■基本情報
名前: ミルミル・ミルカ
種族: ハーフフェアリー(呪いの落とし子)
性別: 女
■能力値
筋力: 7
敏捷: 9
知力: 933
HP: 70
MP: 18702
■技能(スキル)
・氷系魔法
・変身魔法
……
「……師匠」
ミルカ師匠は目を伏せた。
「……どっちかというと、あっちの人間の姿の方が魔法っていうか……
こっちの姿でも、羽がない……中途半端な存在なんでシュ……」
ミルカ師匠は、悲しそうに笑った。
「……ミルミルっていうんだ……」
「いや、話聞けでシュ。
他にもっと触れるべきとこあったでシュ」
「いや、ミルミルミルカなんて、超かわいいじゃん! 女児アニメいけるよ!」
「なっ……う……
いや、だから、呪われた存在で……」
「大丈夫! 最近の魔法少女はだいたい病んでる!」
ミルカ師匠はなにかを堪えるような顔をした。そして、なにかを言いかけて……結局、口を閉じた。
ミルカ師匠は、そっとボクの頬に額を押しあてた。
「ホント、バカな弟子でシュ……」
頬がちょっと湿ったような気がしたけど、気のせいだったかもしれない。
「……でも」
「……痛いっ!」
ミルカ師匠は全身のバネを使って、頭突きを繰り出した。
……筋力1桁なのにやるじゃないか……
「見てたでシュよ! お前、さっき欲に負けそうになってたでシュ!
そんな弟子に育てた覚えはないでシュ!」
「あれ? そういえば、破門になったような……」
「一回破門してもう一度入門させたでシュ!
1番弟子だったけど、もう32番弟子まで下がったでシュ」
1番弟子ってそういうシステムだっけ?
「フッ……なんだ、ユート、私に欲情してたのか?」
浴衣を着たシノが鼻で笑った。
いや、浴衣って!というツッコミはもうしないこととする。
「お前なんか、リナたんを100点とすると……」
シノは大きく息を吸い込んだ。
「0.00000000001点くらいだ」
それ、100点と比べにくくない?
10兆分の1って言いなよ。
「で、ソレは連れてくのか?」
ソレがミルカ師匠を指してることに、ボクは一瞬気がつかなかった。
「ペットか何かかと思って見過ごしてきたが」
「誰がペットでシュ」
「妖精との混血は、それ以下だろう」
「……」
え? なにこの空気。
「ユートは気にならんのか?
世間的には、汚らわしい呪われた存在とされているぞ」
「……こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど……」
ミルカ師匠は顔を背けた。
「正直、影のある生い立ちって設定に憧れる……」
「……お前は、ホントにバカでシュ……」
ミルカ師匠のパンチは、触れているかどうかわからないくらい、か弱かった。
「まあ、いい。魔法だけは使えそうだ。
私は気にせん。
これからの旅について――立ち塞がる脅威について、話をしよう。
……プロとして」
「だから、お前は足を広げて座るなでシュー!」
……浴衣って、良いよね……
********
「我々は囚われたリナ王女を助けるために、魔王城を目指している。
……プロとして」
シノは国と山脈くらいしか描かれてない大雑把な地図を広げた。
ミルカ師匠はボクの耳にこっそりささやいた。
「……この人は、なんのプロの人でシュか?」
……なんだろう?
もう暗殺者はやめてるし……
「……ストーカーのプロ……?」
ミルカ師匠は、 (; ・`д・´) こんな顔でシノを見た。
「我々のいるのは、ここ。辺境都市ブレアティス。
魔王城がここだ」
ボクらの会話には反応を返さず、シノは、トン、トン、と地図の2箇所を指で示した。
「……そんなに遠くなさそうだけど」
今のペースなら、3日もかからないような。
「ユートの速度が常識外れなんだが……
これからはそうはいかん」
シノは地図の一点を指した。
「さっきも言ったが……
ここにある塔には、心を操るという……奈落の終焉四柱が第一柱、ヴォル=アビス・カルネージがいる」
シノは声のトーンを落とした。
「……そんな大物と戦うなんて、想像もしたくないでシュ」
ミルカ師匠も暗い顔だ。
有名な中2らしい。
「その先にも、十二魔将第三席『千人義理』冥刃のアルカインの根城がある」
その序列付きの幹部枠は、何種類あるんだよ。
すでに16体の中ボスがいることになってるからね?
……あと、漢字間違ってない?
「そして、この一帯は、凶なる十三星・第七星――虚無の支配者バルドレクスの領域だ」
また増えた!
合計29もあるけど!
あと虚無の支配者って平民だよね!?
「……いくらユートでも……どこまで太刀打ちできるか……」
「……でシュね……」
暗い顔をする二人に、ボクはしばらく迷ってから手を上げた。
「……迂回したら良くない?」
「え?」
え。
「え」
え?
「いやだって、目的地、魔王城じゃん。
別に途中の敵とか……無視して通り過ぎたら、良くない?って……」
「え?」
え。
「え」
え?
「……勇者の旅って、そういうもん?って疑問はあるでシュが……」
「……リナたんの元に急ぐためなら……プロとして」
――奈落の終焉四柱が第一柱、ヴォル=アビス・カルネージ――
――十二魔将第三席、『千人義理』冥刃のアルカイン――
――凶なる十三星・第七星、虚無の支配者、バルドレクス――
スルー、決定!
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