最強になるために剣の道を歩んでるわけじゃない!
一ノ宮美夜
第1話 剣が好きなだけです
僕——アレックス・カルラインは、平凡な家庭に生まれたただの男子だ。
ただ剣が好きなだけ。別に強さとかどうでもいい。僕はただ好きに剣が振れればよかった。
だから学校も騎士の育成校へ通い、剣の鍛錬を重ねる内に、周りからは強さという定規で実力を測られた。
「アレックス、君を卒業後に雇いたいと申し出たお方がいる」
師範の蓄えられたヒゲをぼーっと見ていると、クラスメイトに背中を叩かれた。
「おい、アレク、早く行けよ!」
「僕?」
自分を指差し確かめる。それを見た背中を叩いたやつは、早く前に出ろと教壇の方を指差す。
「あ、はい……なんでしょう?」
「……話を聞いていなかったか? まったく……お前はいつもぼーっとしているな。そんなので王女様の護衛が務まるのか……」
「え?」
僕の素っ頓狂な声に頭を抱える師範。そして彼は僕の頭に優しく拳を下ろしてから、一枚の契約書を差し出した。
「アレックス、お前宛だ。読んでみろ」
「『アレックス・カルライン。貴殿を私、アリシア・ローヌ・ハイランダーの近衛として雇い入れる』って、また冗談を。僕が王宮勤ですか? 執事とかでしょうか?」
「馬鹿者。騎士としてに決まっておる。お前の成績表でリクルートにかけた。そしたら王女殿下が直々に書状を送ってこられたのだ」
「はあ……」
納得のいかない僕に、師範は顔を真っ赤にして怒っていたが、僕としてはなんで僕なのか。王宮勤となれば自由な時間も少なくなり、剣を振る時間が減ってしまうじゃないか、と考えた。
「ただ好きに剣を振るだけで生活できると思うな。アレックス。お前が剣が好きだと言うことはよーーーーく、知っておる。だがな、その実力も、素晴らしいものがあると言うのは私も認めているところだ。無論、この教室の誰もが同じだろう」
師範はそう言うと、僕の肩に手を乗せた。
「一度話をして来なさい。王女殿下は寛容なお方だ。お前の思いの丈をぶつけると、わかってくれるかもしれん」
「……わかりました」
僕はとりあえずそう返事をし、粗相を働き話を白紙に戻してやろうと思ったのだ。
そして約束の日取りが勝手に決まり、面談の当日となった。
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