Report.2


 観察対象の活動の記録を始める。


 観察対象、山田安司、三十三歳、男性。以下、ヤスとする。


 本個体は一日を通して、意識レベルを維持できない。 おおよそ三分の一の時間、意識は低下する。どうやら人類の多くが同じような生態らしい。


 この生態は非効率なうえに危険である。進化の過程で淘汰されなかったことが不思議である。


 ヤスは、朝になりしばらくすると、ゆっくりと意識レベルを上げていく。その後は、排せつ行為を行い、顔を洗い、歯を磨くが、落とすべき汚れの四十パーセント近くは残存している。


 その後、ヤスは衣服と称する保護具を身につけ、低意識レベルで過ごすアパートと称する閉鎖空間の外に出て、徒歩でコンビニエンスストアと呼ばれる施設に向かう。この施設は、人類の社会構造を理解するうえで重要と推定される。というのも、食料供給、物流拠点、金融と称する価値交換処理機能を兼ねるためである。


 ヤスはここで頭脳および肉体の活動を維持するための、食料と飲料を入手する。その内容は、多くの場合、糖質を多量に含む多孔質のでんぷん類と二酸化炭素と大量の糖質を溶かし込んだ水溶液である。


 ヤスの新陳代謝をスキャンしたところ、この食料と飲料では糖質は完全に過多だが、新陳代謝を維持するための有機物および無機質は驚くほど不足する。


 ヤスは入手した食料と飲料を天気が良ければ近くの公園と呼ばれる開放空間で摂取する。天気が悪く摂取が難しいときは、職場と呼ばれる時限制の拘束場所に持って行き、拘束が始まる前に、慌ただしく摂取する。


 次のレポートは職場における活動について報告する。

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