【第2部】 ワイルド・ブラッド(牙を剥く世界)

第1章 サンセット・ブラッド

0 月


 

 月が綺麗な夜だった。


 海山双葉は、夜道を走っていた。

「はぁはぁはぁ、双葉の姿なら血は吸えまい!」

 追いかけていた、<吸血少年>がなげく。

「なぜだ少年、なぜそこまでオレをこばむ?」

「うるさい!

 吸血鬼ばすたぁぁあ! 2!!!」


「……は??」

 目を覚ますと,そこは赤羽牙の家だった。

 海山若木は、かけられたコウモリ柄の、紫色のブランケットを外し、辺りを見回した。

「あれ、オレ。寝てた?」 

 キッチンでお皿を洗っていた女性が振り返る。

「ごめんね、せっかく遊びにきてくれたのに、君が寝てる間に夜になっちゃって、弟がハントにいっちゃって」

 若木がリビングのソファから立ち上がる。

 メガネをかけた地味な感じの彼女。長い髪を二つ結びにし、垢抜けないロングスカートを穿いている。 

 しかし、よく見ると、牙の姉だけあって、かわいい顔をしている。

「ハント?」

「あ、血を吸いに行っちゃって…」

「‼︎」

 

 そう――彼女の名前は、赤羽美紅みく

 牙の正真正銘の姉であった。



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