第8話 スウォームとグレイド
二人は遠回りすることにして進路を変えた。
スウォームの群れを遠く横目でみながら歩いていく。陽が傾き始めている。
「あっ、エア! まずいわよ」
(また、先にミューイが気づいた……)
エアは変な点が一瞬気になったが、それどころではない。せっかく遠回りした進行方向にもスウォームの別の群れが現れたのである。
「くっ、第二の群れか……」
「エア、もう一つ……」
ミューイがまた別の方向にも第三の群れが見えてきたのに気がついた。
「くそっ、囲まれた」
よく観察すると三つの群れはいずれもここを囲むように動いている。明らかにエアとミューイの存在を認識し組織的に攻撃しようとしていることが分かった。
飛行体やバイクを準備しなかったことをエアは後悔し始めた。エアが思ったよりもスウォームは賢かったのだ。相手がただのスウォームだからミューイを守ることはできるだろうが、数が多いので対処に時間がかかり村に到着するのが夜になってしまうのがやっかいだ。
スノウにまたSOSを出すかどうか迷ったが、エアにもプライドがある。何度も呼び寄せるのは気が引ける。(またバカにされるのは嫌だ)
「ミューイ、ほら。気を付けて使えよ」
エアはレーザーガンとレーザーソードをミューイに渡した。
「わお、初めての実戦だね!」
ドームを出る前にエアはミューイに武器の使い方を教えた。外の世界に出る以上、ある程度自分の身を守る術を身につけておかなければいけない。ミューイは武器を扱うセンスがそこそこ良かった。
二人はスウォームの群れと戦いを始めた。スウォームは移動は四つ足だが、戦うときは二本足で立ち、ちょっとした棒のようなもので襲って来る。倒されて集団に囲まれて捕まるとさすがにやばい。
ミューイは若さを武器に、レーザーソードを振り回し、レーザー銃を乱射して、果敢にロボットたちをやっつけた。
スウォームには回収係のロボットがいて、仲間が倒されて動けなくなると回収していく。おそらくリサイクルするのだろう。
少しゲームのような感覚にもなるが……繰り返す。スウォームは蟻のように数が多いのだ。油断をすると(例えば誤って転んだだけで)たかられて身動きできなくなり、殺されることまである。決して油断はできないのだ。
ミューイは蹴りや捕まえて投げることまでして多数のスウォームに立ち向かった。
エアは主に銃を器用に扱い確実に倒す数を増やしていった。エアはミューイの三倍のペースでスウォームを駆除していった。
「エアー、疲れてきたよ。倒しても倒しても沢山いるよー」
実際十五分ほど戦って二人で500体ほど倒したが、二人を囲んでいるスウォームの数は数万体いる。このままでは全部倒すのに半日はかかる。いやその前に体力が持たない。
エアがSOSを出そうとした時、地上2メートルくらいの低空でクルーザーと呼ばれる飛行車体がやってきた。操縦しているのは男性だった。
「そこの二人、乗れ」
助けが来たことが分かってエアとミューイが飛び乗ると、その男はUターンした。その時ミューイが叫んだ。
「待って!ロンが、私の犬がいるの!」
ロンはスウォームの群れの中で孤軍奮闘して走り回っていた。
「ちっ、おいお前、操縦できるか?」男が舌打ちをする。
「あ、ああ」
エアが返事すると、男はレーザーソードを手にして飛び降りた。
エアは慌てて操縦かんを握った。
男は見事な刀さばきでロンの周りスウォームを駆除してロンを手で抱えた。
次の瞬間、信じられないような跳躍をしてクルーザーに戻って来た。
男はロンをミューイの方に放り投げる。ミューイはロンを受け取った。
「ロン~! 良かったね! ありがとう!」
男は黙ってエアから操縦かんを戻し、村の方角に機体を向けると加速した。
「助けてくれてありがとう。僕はエア、ドームから来たヒューマノイドだ。こちらはミューイ。人間だ」
「知ってる。ローレアから聞いた」
前方から顔を動かさずに男が答えた。ミューイは男の鋭い顔つきに、内心(カッコイー)とハートマークを量産した。
男は名前をグレイドと言った。二十三歳の人間。ローレアから連絡を受けてウエストヴィレッジから二人の様子を見に来たのだった。エアとミューイは難なく目的の村に行くことができた。
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