第9話 三島由紀夫

 詩の勉強をして思ったことは、もっと自由に創作をしてよいということだった。そこでチオリは敬愛している三島由紀夫に回帰することになる。


 三島由紀夫とチオリを繋いでくれたのは、立花博士である。燻っていたチオリに、三島由紀夫と同じにおいがすると、強く勧めてくれたのだ。そこからチオリは三島由紀夫を読み始め、あっという間にハマって、山梨県にある三島由紀夫文学館まで行ってきた。


 最初はただただ、三島の才能に驚くばかりだったが、三島の何を自分が好きなのかを考えていくと、三島の比喩を使った情景描写が好きだとわかった。比喩の部分をよく読むと、本当に自由に書いている。


 三島由紀夫の『小説読本』で三島自身も、時代遅れと言われようが情景描写が好きだ、と言っていた。三島の思いは令和のチオリに伝わり、チオリを勇気づけた。


 さらに小林秀雄の『読書について』を読み、自分の考える「小説とは何か」に外殻が見えてきた。


 いよいよ本格的に何を書こうかというとき、たまたま町田康先生の宇治拾遺物語の朗読動画を聞いた。


 遠野物語でいこう……!


 そう思って、八万字の作品を一ヶ月で書いて群像に送った。文体研究をしていなければ、作品の世界観を維持したまま八万字を書き通すことはできなかったと断言できる。当落などどうでもよい。これは卒業研究だ。クラフトがアートを可能する。それを身をもって体験したことに意味がある。


 田中と出会い、自分の文体に出会わなければ、群像への投稿は憧れのまま年月だけが過ぎていっただろう。

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